揺れる大分・別府(3)ゆめタウン誘致の正当性・妥当性に疑念も [2011年3月9日10:03更新]

タグで検索→ |

noimage

(11年2月号掲載)

別府市役所大分県別府市・浜田博市長が初当選した03年の選挙で、同氏の側近だったある人物は「出納責任者からX社長に会ってくれと言われたが断った」と振り返る。

また元市幹部は「浜田市長が出直し選に踏み切る意志を固めたころ、『選挙をする以上は彼に会ってほしい』と市長から直接頼まれた。後で聞くと、X社長のことだった」と証言。 

さらに、別の市関係者は「X社長は市長の応接室にもフリーパスで出入りしていた」と話す。



08年2月20日には、進出の条件としてイズミ側が約束しながらも手付かずだったシネマコンプレックス(同一の施設内に複数のスクリーンがある映画館)建設についてイズミ側幹部と市長応接室で話し合いが持たれた。

この時出席していたX社長は「イズミは約束を守らない、殺してやるぞ」と、イズミ側幹部を怒鳴りつけたという。「その場にいた職員がびっくりして自分の所にあわてて飛んで来た。X社長はその後、謝罪したようだった」(市関係者)。

本紙取材に浜田市長「承知していない」 

ゆめタウンの進出は、多くの市民が反対する中、最終的には市長権限という極めて強引な手法で決定されたことはすでに述べた通りだ。

08年度には前出のシネコン建設などを盛り込んだ「中心市街地活性化計画」が国の認可を受けており、浜田市長はゆめタウンを軸とした地元活性化策を進めようとしていると言っていいだろう。

だが残念ながら、中心市街地型の大型商業施設で既存の商店街が活性化した例は、少なくとも筆者は寡聞にして知らない。 

大分県別府市 中心部地図

源泉の数は2800カ所以上、日本を代表する温泉地であり毎年1000万人を超える観光客が訪れる国際観光文化都市・別府市。だが商店街の現状はどうか。中心部を実際に歩いてみると典型的なシャッター通りが続く。

「こんな近くにゆめタウンができたら、商店街は客を奪われ、さびれるのが当たり前」(地元タクシー運転手)。それでも、いくつかの民間団体やNPO法人が活性化のために地道な努力を続けているという。 

こうした状況にもかかわらず、商業施設誘致の裏側で「市長の代理人」が地元企業から多額の現金を受け取っていたとすれば─。 

 

本紙は2月8日、浜田市長に対して

(1)X社長とはどのような関係か

(2)X社長を契約交渉の「代理人」としていたのは事実か

(3)X社長から現金の提供を受けたことはあるか

(4)こうした疑惑が事実であれば誘致決定の正当性に疑念が生じるが、どう考えるか

などと列記した質問状を送付。市長は同10日、秘書広報課を通じ「X社長は知っているが、その他の点については承知していない」と回答した。 

 

4月24日には別府市長選、同市議会議員選が同時に行われる。浜田市長は4選を目指して出馬することをすでに表明しており、1月27日に開かれた地元商店連合会の会合では「『歳末大売り出しの時に出した補助金150万円を市長権限で3倍にする、そのためには選挙で私を通してほしい』と挨拶し、失笑を買っていた」(出席したある市民)という。 

一方、ある市議は苦々しげにこう語る。「浜田市長は03年に初当選した際、『(楠港跡地は)人の集う緑豊かな野外イベント広場として活用する』とマニフェストで掲げていたのだが、いつの間にか商業施設誘致に変わった。

急に市長を辞職した時も誘致反対派は住民投票しか想定しておらず、準備の時間がなくて出直し選に対応できなかった。市長の強引な手法に納得できないものはあったが・・」。

3月議会では一部の市議が「浜田市政を根本から揺るがす事態だ」として、徹底的に追及する構えだ。