高島市長は「愚か者」になれるか(2) [2011年6月17日14:50更新]

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(11年5月号掲載)

報告書を受け取る高島市長(5月15日)福岡市民が前任者に続いて政治・行政経験のない人物を市長を選んだのはなぜか。

例えば五輪招致、例えば人工島事業。多くの市民が反対しているにもかかわらず、訳が分からないうちにどんどん進んでいく。

その裏に見え隠れする利権、一部の政治家や企業、業界の思惑。

そんな市役所などいらない、われわれと同じ目線を持つリーダーがほしい、従来の役所の常識では考えられないようなことをやってほしい。そんな思いからではないか。 



5月15日の会合で調査委員の1人、宮城県立こども病院院長の林富氏は東日本大震災で自ら被災した経験を踏まえ「新病院は孤立化の恐れがある所、津波が最初に来る所には建てるべきではない」と述べ、人工島案をはっきりと否定した。

林院長の言う通り、地震や津波を想定した際、防災面で人工島が病院立地に適さないのは明らかだ【注:この点は早い段階から指摘されていた。阪神淡路大震災の際、神戸市のポートアイランドが孤立化し病院機能がストップした例があり、本紙でも08年6月号で取り上げている 】。

西日本新聞の報道によると、高島市長は会合後、「3月11日を境に物事を考える基準が変わった。不安な声などをどう行政運営に反映させるか考えたい」と語ったという。 

多額の購入費を返さなければならない、土地の新たな利用目的も白紙、開院までの時間も掛かる。それでも、子どもと市民の命を守るためには移転計画を撤回するしかない、後に残る諸問題は私の責任で必ず解決する─こう言い切ることが出来る「愚か者」こそ、市民が求めるリーダーなのではないだろうか。 

それでも、高島市長が移転計画を継続するとの結論を出すのであれば仕方がない。進行中の施策を全面的に変更するのは実に難しい、事情は理解している。ただその場合、市長は2度と「市民の命を守る」「安心・安全な街づくりを目指す」などと口にするべきではない。 

【編注】本稿は5月16日時点。高島市長は5月24日、新病院は人工島で整備することを正式に発表した