代替エネルギー今こそ石炭に注目を(2)世界の主流は現在、石炭火力   [2011年7月1日11:53更新]

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(11年6月号掲載)

「石炭火力 発祥之地」と刻まれた石碑福岡県はかつて筑豊・筑後地域に炭鉱を抱え、北海道とととも産炭地として日本の近代化を支えた。

だが1960年代のエネルギー革命で主役の座を石油や天然ガスに奪われ、県内の炭鉱はすべて閉鎖されてしまった。そのため、多くの福岡県民が「石炭はもはや過去のエネルギー」と思い込んでいるようだ。 

確かに、70年代前半までは火力発電における主流は石油だった。しかしオイルショック以降、石炭や天然ガスによる発電量が増加。09年の統計によると、日本の電力は約28%が石炭火力発電によって供給されており、天然ガスや原子力を上回って第1位なのである。 



ちなみにアメリカやドイツではほぼ半分、中国では約8割、EUでは約3割。世界合計では約4割の電気が石炭火力による。つまり世界の発電の主流は石炭なのである。

その理由として(1)価格が安く比較的安定していること(2)埋蔵量が豊富で可採年数も他の資源に比べて長いこと-などが挙げられる。

CO2対策は?

「なるほど、世界の発電燃料の実情は分かった。だけど、石油・石炭などの化石燃料は温室効果ガスの1つとされる二酸化炭素(CO2)を排出するから、これからはできるだけ減らした方がいいんじゃないの?」 

その通り。近年、地球温暖化が世界的な問題となり、CO2を排出する化石燃料に対する視線は厳しい。これをどうするかは極めて重要な課題である。 

電源開発のイーグルプロジェクトではすでに07年度から、この問題に取り組んでいる。ガス化炉を改造してCO2分離設備(石炭ガス化発電施設に設けたものとしては世界初)を設置。石炭ガス中のCO2の一部を取り除いて回収する実験を重ねており、最終的に大部分のCO2を除去することを目指している。

この技術はまだどの国でも実用化されておらず、同プロジェクトが他国に先駆ける可能性は十分にある。

産炭地の誇り胸に

電源開発(愛称・J - パワー)若松総合事業所入り口にある石碑には「石炭火力 発祥之地」と、誇らしげに刻まれている(写真上)

「石炭に関する知識は旧産炭地である九州・北海道以外ではほとんどなくなっていたと言っていい。われわれはこの地で石炭火力をリードしてきた。そのプライドを持って、研究開発に当たっています」(職員)。 

石炭をガスにすることで効率的に発電でき、コストを下げることができる。石炭を燃やす過程で出るCO2は、そのほとんどが大気中に排出されない─そんな「夢の発電設備」に関する実験が、わが福岡・若松で日々行われている。このことをまず、読者の皆さんに知っていただきたい。

その上で福岡県選出の政治家の皆さんにお願いがある。エネルギー問題はすなわち政治・政策の問題である。研究者の尻を叩いて“働かせる”のも政治家の重要な仕事の1つであるはず。同プロジェクトはNEDO(独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構)との共同事業で資金の3分の2は国からの補助金。今後の代替エネルギー問題を議論していく上で、長年地元で培われ実用化一歩手前まで来ている最新技術に、ぜひ光を当ててほしい。 

福岡では現在、石炭は産出されていない。だが石炭に関する高度な技術の開発拠点、世界への発信拠点として旧産炭地が再び輝きを取り戻せば、実に素晴らしいことではないだろうか。

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