代替エネルギー 今こそ石炭に注目を(1)”夢の発電設備”へ研究着々 [2011年6月30日10:17更新]

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(11年6月号掲載)

石炭ガス化複合発電のパイロットプラント原発事故を契機に、代替エネルギーへの関心が高まっている。中でも太陽光、風力、地熱などの自然エネルギーがマスコミの脚光を浴びているが、いずれも安定供給の面で課題が残り、実用化にはまだまだ時間がかかりそうだ。

そこで本紙はあえて「今こそ石炭に注目すべき」と提言したい。

「過去の燃料」といったマイナスイメージがある石炭だが、実は日本をはじめ世界の電力供給は現在、石炭火力発電が主流。そんな石炭を「夢のエネルギーに」と、研究開発を続けている企業研究所が北九州市にある。

従来より効率的に発電でき、地球温暖化の元凶とされるCO2を大気中に排出させない、そんな新技術とは─。  



 

北九州市若松区、響灘に面した広大な埋め立て地に「電源開発(愛称・J - パワー)若松総合事業所」(松野下正秀所長)はある。

広い敷地内には九州最大級規模の太陽光発電設備や、トマトを栽培する大規模ハイテク温室の列が。年間約2000人が見学に訪れるという。 

電源開発は、戦後の復興期に国内の電力需要が増加したことに対応するため、国によって1952年に設立された特殊会社(2003年に民営化)。以来、全国各地に建設したダムによる水力発電所や広域火力発電所から電力各社に電気を供給する一方、エネルギー効率を上げるための研究や海外での発電事業などを進めてきた。その発電能力は九州電力に次いで第5位(10年度)、日本最大の卸電気事業会社である。 

若松総合事業所は、筑豊炭田の石炭を利用する同社初の火力発電所、「若松火力発電所」として1963年にスタート。発電所そのものは89年にその役目を終えたが、その後は石炭を利用した技術の試験や太陽光発電、バイオテクノロジーの研究などを行っている。

石炭をガスにする  

その中で「日本の発電事情を劇的に変える可能性がある」と、一部関係者の注目を集めているのが「EAGLE(イーグル)プロジェクト」である。  

現在行われている石炭火力発電は、細かく砕いた石炭(微粉炭)を燃やし、ボイラーで水を熱して水蒸気を発生させ、これによってタービンを回して発電する仕組み。同プロジェクトはこれよりも効率的な新技術を開発しようと1995年にスタートした。 

キーワードは「石炭のガス化」。まず微粉炭と酸素を炉に吹き付けて不完全燃焼させる。発生した合成ガスを燃やしてガスタービンを回し、その排ガスの熱を利用して水蒸気を発生させて蒸気タービンを回す。

2通りの方法でそれぞれタービンを回すことで、従来と同じ発電量を少ない石炭でまかなうことができる。これが同プロジェクトで進めている「石炭ガス化複合発電」(IGCC)である。 

 

98年に建設が始まったパイロットプラント(写真)は現行の大型火力発電所の50分の1の規模。2002年から試験運転を開始、すでに世界トップレベルのガス化効率や連続運転1000時間以上など、着々と結果を出している。 

石炭をガスにするメリットは他にもある。1つめは化学原料製造や燃料製造に使えること。2つめは簡単に運べること。石炭は固体なので発電所内などでの持ち運びが不便。気体であるガスは石炭よりもはるかに運搬が楽だという。

(続く)