(07年1月号掲載) その一方、政治経験がなくその手腕が未知数であること、また推薦を受けた民主党が超少数与党(定数63中4人)という状況もあり、就任直後の12月議会での対応は市民の注目を集めた。 人工島をはじめとする重要課題が山積する一方、年明け早々には教員採用試験の漏洩問題が浮上するなど、今後の動向が注目される中、休日の吉田市長を訪ねて話を聞いた。 ─市長就任から1カ月経ちました。挨拶回りや初めての議会などでお忙しかったと思いますが、新年を迎えた今のお気持ちは? 就任直後から様々な事務作業に追われ、またすぐに12月議会が始まったこともあって、めまぐるしい日々であっという間だったように思います。一月も半ばまでは挨拶回りの予定がぎっしり入っています。ですが年末年始の休みもありましたし、今はやっと先を見通してやれるかな、という気持ちです。これからが本当の意味でのスタートと言えるかもしれません。 ─「超少数与党」ということで12月議会での対応が注目されました。初めての議会対策という点でいかがだったでしょうか 議場での雰囲気は、最初は確かに「ウェルカム」ではなかったかもしれません。ですが終盤になると市議会議員の皆さんの対応も少し違ってきたように感じました。「吉田というのはこんな男なのか」といういわば吉田像 がわかってもらえたのではないでしょうか。 ─議会では、やはり人工島に関する問題に質問が集中していました。今後の方針をあらためて 1月半ばまでに検討チームを立ち上げます。これは10人程度の規模を見込んでおり、状況によっては外部からの識者もありえると考えています。アイランドシティの現状について情報を収集・精査し、どのような問題があるのか、あるとすればそれはどこなのかといった情報を共有するのが最初の目的です。 その上で、どこをどのように見直すのか、今秋をめどに結論を出したいと思います。たとえば港湾機能。福岡全体の港湾へのニーズが高まっているという状況があるのは確かです。しかし、だから岸壁を拡充するとしても、そのバックヤードが売れるのかという新たな問題が生じてきます。なかなか単純にはいきません。 ─こども病院の移転など、すでに議会で決定済みの問題もあります アイランドシティのプロジェクト全体の問題としても考えますが、市の医療体制のあり方という別の視点からも見る必要があります。こども病院と市立病院を一緒に移転させるというのは、アイランドシティ救済の意味合いが強いといわれても仕方がない。市民に対するサービス向上という観点からあらためて考えます。 ただ、移転予定地の売却を前提に融資を受けていますから、早期に結論を出さないといけないでしょう。すでに居住されている方々もおられるわけですから、市民の皆さんが安心できるようスピード感を持ってやるつもりです。 ─学童保育の無料化についても質問が相次ぎました 昨年9月から有料化を開始したばかりという状況なので、仕方がないと思います。まずは午後5時までの学童保育については来年度中に無料に戻すよう最善を尽くします。その上で延長保育のあり方を、午後6時までがいいのか7時までなのかといった点を含めて見極めたい。 学童保育の問題は、案外根が深いというのが私の認識です。われわれが子どもの頃とは遊ぶ道具も違うし社会・家庭環境も違います。一体今の子どもたちはどのような状況に置かれているのか。自由に遊べる場所も少ない中、子どもたちが見ている「風景」はどんなものなのか。実態を見たうえで、私は「放課後問題」として大きく捉えてみたいと考えています。国も同様の問題に力を入れようとしている状況もあり、文部科学省などと連動することもあるでしょう。 ─教育といえば年明けから教員採用試験漏洩問題が噴出しています 事実上の教職トップによる行為ということで、きわめて由々しき問題だと思います。教育長サイドには、速やかに事実関係を調査した上で情報を開示するようにお願いしています。市役所と教育委員会という組織の違いはありますが「領海侵犯」をするという意味ではなく、お互いが協力しあって問題に取り組むべきだと考えます。 ─市の財政再建は待ったなしの状態です。新空港問題など、大型事業の見直しについては 新空港については年明けに新たな調査結果が出るということなので、その中身を見る必要がありますが、今は必要ないという立場は変わりません。そのほかの大型開発・事業については、進捗状況などをひとつひとつ検証しているところです。その上で中止するものや規模を縮小するものなどを決めていきます。その結果は、まずは今年度中に市政改革の成果として公表する予定です。 市の財政状況は予想以上に厳しく、今は我慢をする時期だという認識に変わりはありません。市民のみなさんへの負担はできるだけ抑えながら、公共事業の見直しなど無駄な支出を減らしていくしかありません。 ─市長は「福岡市の新たなグランドデザインを出すと公約に掲げています。これに関連してJR博多駅の建て替え計画もすでに発表されていますが グランドデザインについては07年度が審議会の見直しの時期に当たります。福岡市をいかに人と自然が共存できる街にしていくか。識者の意見を募るなどして新たな街づくりを進める絶好の機会です。 また、博多駅の建て替えは、100年に1度の大事業だという認識です。周辺を含めたグランドデザインはすでに出ていますが、市として何が協力できるのか、または連動していけるのか、JR九州さんをはじめ関係者と話し合いたいと思います。 ─就任してすぐに副市長の1減(3人から2人へ)、収入役の廃止を実施しました 実際に中で見てみて、市長周辺組織はやはり複雑でわかりにくいと感じています。公約で掲げたとおり、経営補佐部については廃止する方向ですでに手続きを進めています。また、これまでの市の意思決定の場であった「経営会議」も、あり方を含めて見直す方針です。 ─最後に、今年特に力を入れたい課題を1つ挙げて下さい やはり教育の問題に真剣に取り組みたい。昨年はいじめによる自殺が全国的な問題となりました。社会のひずみや矛盾が子どもに押し付けられている現状があります。教育現場だけではなく、働く女性の問題や地域の問題などにも関連しています。 子どもたちが笑顔で暮らせる街、安心して子育てできる街を目指し、行政がどのように関わりリードしていけるのか、しっかり考えたいと思います。
大型公共事業偏重の見直しと財政再建を掲げて昨年11月、現職の山崎広太郎氏を破って初当選を果たした吉田宏市長(50、写真)。50年ぶりの民間からの市長、元新聞記者という経歴などが話題となり、新しい福岡市を象徴するリーダーとして期待感を持って迎えられた。

