吉田宏・新福岡市長に「少数与党の洗礼」 就任後初の議会 [2007年1月15日14:43更新]

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(07年1月号掲載) 

野党の厳しい質問 相次ぐ

福岡市役所吉田宏市長就任後初の福岡市議会定例会が、昨年12月15日から25日まで開かれた。「少数与党」の吉田市長に対し、自民・公明党をはじめとする 多数派野党がどのような対応を見せるのか、注目を集めた議会。一般質問では「人工島事業の見直し 学童保育の無料化」など、吉田市長の掲げた公約をめぐって活発なやり取りが展開された。

質問に立った一部の野党議員からは手厳しい言葉が飛び出し、議員席からはヤジが飛ぶなどしたが、関係者からは「初めての経験にしてはまあまあ 無難な滑り出しではないか」との声も出るなど、なんとか乗り切った感もある。

とはいえ、市の抱える課題は山積しており、公約実現をどのような形で進めていくのか、今年度末に予定される議会に向けあらためて政治手腕が問われることになる。

(写真=福岡市役所)



品格欠く自民議員の揶揄

所信表明のために初登壇した吉田市長を迎えたのは、民主党市議(4人)のまばらな拍手と、大多数を占める野党議員が醸し出す、しらけた空気だった。

オール与党体制だった山崎広太郎・前市長時代では考えられない状況。「春には統一地方選挙が控えている。野党議員も「当選したばかりの市長をいじめているとの印象を有権者に与えると、自分の選挙に影響が出る。そんなに厳しい状況にはならないのではないか」(議会関係者)との事前の見方もあったが、やはり歓迎ムードとは程遠いスタートとなった。続

いて行なわれた議案質疑、3日間にわたっておこなわれた一般質問では、吉田市長の公約をめぐって厳しい質問が相次いだ。特に人工島事業の見直しや有料化が始まって間もない学童保育の問題などは、野党議員の質問が集中。市長の答弁中には野党議員席から「はっきり言わんと聞こえんぞ」「財源をどうするのか」などとヤジが飛んだ。

その中でもある自民党議員は、質問の冒頭で「まるで"1日市長"の中学生」と吉田市長の対応振りを揶揄。さらに「よくご存知でしょうが」といいながら人工島の図面をわざわざ市長に手渡した。傍聴していたある市民は「何もそこまでしなくても…」と眉をひそめるほど。

この議員、山崎市長(当時)に代わって選挙に出馬する」「山崎市長が当選したら副市長のポストに就く」として名前が挙がっていた人物。それをふまえると、市長に対する発言や行為はいささか品格に欠けたものといわざるをえない。

無難な答弁に終始

とはいえ、吉田市長の答弁振りも、物足りない印象を受けたのも事実。用意された原稿を淡々と読み上げる姿は、選挙期間中にアピールしてきた若さや新鮮さといった点にやや欠けたものだった。

「最初の議会はとにかく無難に乗り切ることが最大の目標。紛糾などして議会運営が滞っては政治生命に関わる。揚げ足を取られないよう、議員の発言や追及にもひたすら耐え忍ぶしかない」(市役所関係者)との方針からだろう。予想されたこととはいえ、いわば少数与党市長の宿命であろうか。

吉田市長は「確かに最初は原稿を読み上げるだけだったが、後半は自分の言葉で語ることもできたと思うと話す。民間出身の新市長にとって、市役所や議会の実情を把握する、あるいは議員とのやり取りに慣れるにはある程度の時間が必要。初めての議会答弁を何とか乗り切った―と捉え、今後に期待するのが妥当といえよう。

問われる新市長の手腕

市長の公約実現へ向け、議会を通じて明確になった問題点は主に2つあると考える。第1はやはり財源の問題。「何をするにしても財源の裏づけが必要なことは当然だが実際に市役所に入ってみて、予想以上に厳しい状況だった」(吉田市長)。

新たなグランドデザインに基づいた街作り、都心部の交通渋滞緩和策、学校の耐震化工事の早急な実施、地下鉄七隈線の延伸問題―。教育や福祉に関する施策についても同様だ。市職員からは「公約をすべて実現するとなると、いったいいくら必要なのかわからない」との声が出ているのも事実。議会答弁では財源に関する質問が相次いだが、就任して日が浅いという事情があるとはいえ明確な回答とはいえなかった。

大幅な税収アップが急には見込めない以上、他の事業を見直すなどしてやりくりするほかないのだが、それがどこまで可能なのか。どの施策から着手するのかという優先順位の問題と絡む、大きな課題といえる。

第2は議会との関係。すでに進行中の事業を見直すことや、いったん議会で決定された事案を覆すには、当然ながら市議側の反発を招く。吉田市長は「議決の重みは十分認識している」と答弁しているが、市長が掲げた公約がより多くの市民の支持を得たこともまた事実だ。どのような形で折り合いをつけるのか、また徹底的に突っ張るのか。あらためて政治手腕が問われることになる。

吉田市長はすでに副市長と収入役の削減に着手。進行中、あるいは計画中の事業の見直しについても水面下で検証作業を実施している模様で、最初の成果は次の議会までに明らかにされる見通しだ。

 

変革を求めて1票を投じた市民の期待に応えることができるのか。吉田市政の動向に注目し、随時レポートしていきたい。