(09年11月号掲載) 02年から東大阪市長を1期務めた松見正宣氏(柳川市在住、写真)に、為政者の立場から見た地方行政の今後について、論じてもらった。 国民新党と社会民主党と連立する形で誕生した鳩山新政権による政策展開は、必ずしも閣内統一とは言い難いが、いささか性急すぎるほどスピーディーであることは確かだ。 国家戦略室の行政刷新会議の創設や、総務相顧問23人の半数以上、14人に自治体の首長を任命するといった手法に、何かが変わるかもしれないという思いを大多数の国民が抱いている。 同時に、これまで「あなた任せ」の陳情政治を繰り返してきた地方自治体は「地域主権とは何か」をあらためて考えざるをえなくなり、自ら発想し行動しなければ置いて行かれるという危機感を募らせている。 そこで、民主党がマニフェストで掲げた地域主権を踏まえ、地方自治体が直面している課題について述べてみたい。 行政のムダを排除するという行政刷新会議では ▽すべての事務事業を整理、基礎的自治体が対応可能な事務事業の権限と財源を大幅に委譲 ▽国から地方への『ひも付き補助金』を廃止、地方が自由に使える『一括交付金』として交付。国の出先機関を原則廃止 ▽道路・河川・ダムなどのすべての国直轄事業における負担金制度を廃止し、地方の約1兆円の負担をなくす(後略) -などとしている。 小泉内閣が地方にバラ色の展望を期待させながら、税源委譲が伴わず苦難を強いる結果となった「三位一体の改革」を思い出させるが、マニフェストでは財源の委譲が「大幅に」という形容詞で謳われている。 地方が求めてきたのは権限の委譲に伴って財源が保証されることであり、それによって主体的な行政運営が可能になり、国の束縛関与から脱する地域主権が確立されるのだ。ひも付き補助金の廃止も然りであり、地方は自由に使える補助金を待ち望んでいる。 「地域主権」。言葉の響きはいいのだが、ここで問題となるのは、受け皿となる地方自治体首長の理念と先見性、議会のチェック機能と審議力、自治体職員のスキル(技術能力)である。この3つがきちんと機能しないと地域主権などおぼつかないし、住民の幸福を追求するための行政運営は夢のまた夢となりかねない。 もちろん、厳しい選挙を勝ち抜いた首長と議員、公務員試験の難関を突破した職員らに備わっていて当然の能力なのだが、地方行政の現場においては、どうひいき目に見ても合格点に達しない状況が散見されるのが現実であろう。 首長には「何をするか」ではなくて「何のためにするのか」の理念がなければならない。また議会については、定数の適正化、つまり削減が喫緊の課題である。少数精鋭化することで活発な議論が期待できるし、議員報酬や年金が目当てだけの人は、有権者から拒否されることになる。 職員のスキルについては個人差があることは否定できないが、自治体の人事管理をもっと柔軟に行うのが望ましい。1つの専門部署には詳しいが、隣の部署の仕事はまったく分からない職員が多数いるのは人事が硬直化しているからであり、どの仕事も分かるオールラウンドプレイヤー、複数の業務に精通したマルチな人材の育成こそ急務である。 鳩山政権への評価判断を下すには来年度予算執行まで待たねばならない。だがそれとは別に地方は、こうした課題に早急に取り組むべきである。 最近「市民協働」という言葉が頻繁に使われる。地方自治体が住民と協力して何かを作り出していくこと。これが協働の理念であり、その前提として行政の責任という重い役割があることを忘れてはなるまい。 「地方が変われば日本が変わる」。その時こそ、真の地域主権の時代が到来するだろう。 【松見正宣 (まつみ・まさのぶ)】
民主党が圧勝した衆議院総選挙から3カ月。政権交代をきっかけに、地方行政のあり方をめぐって様々な議論が展開されている。民主党政権がマニフェストで掲げた「地域主権」を実現するために、地方自治体が直面している課題は何か、そしてわれわれ市民に求められるものとは─。
1942年、京城府(現韓国・ソウル市)生、66歳 関西大卒
65年、NHKに入社、98年に退職
02年、東大阪市長選に初当選 07年8月、柳川市に転居
現在、大阪経済法科大、大阪芸大客員教授
著書に「突きの進」(文芸社)など
【特別寄稿】真の地域主権を目指して 前東大阪市長・松見正宣氏 [2009年11月30日14:56更新]
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