4月施行の県暴排条例 批判根強く(1)当局に恣意的運用の余地 [2010年9月21日12:48更新]

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(10年8月号掲載)

暴排条例に関する当局作成パンフ全国最多、5つの指定暴力団があるわが福岡県で、今年4月から新しい暴力団排除条例が施行されている。

暴力団に資金提供した企業や個人に対し、悪質な場合には懲役刑や罰金を科すなど、これまでにない厳しい内容が「売り」で、マスコミも「全国初」などと大々的に報じた。

その一方で、条例作成に関する議論の段階から今に至るまで「捜査当局側が恣意的に運用できる余地がある」「一般人を罰するのは本末転倒」といった根強い批判が、一部の司法関係者や捜査当局者の間で囁かれていることはまったく報じられていない。

そこで今回は、司法関係者らが指摘する新暴排条例の問題点を、いくつか挙げてみたいと思う。



極めて曖昧な定義  

新条例の大きな特徴は、一般の企業や個人が暴力団関係者に資金などを提供した場合、暴力団側だけではなく提供した一般人側も罰することができる規定を設けたことである。暴力団の資金源を断つことを目的に「提供した側も悪い」と定めたわけだ。 

ところがある司法関係者は「新条例の最大の問題点は、実はこの部分にある」と指摘する。「少なくとも条文中において、暴力団への利益供与に関する具体的かつ明確な定義がないのです」 

県暴排条例の第4章「暴力団員等に対する利益の供与の禁止等」第15条では、事業者は「暴力団の威力を利用する目的で」「暴力団の活動または運営に協力する目的で」「情を知って、暴力団の活動を助長し、または暴力団の運営に資することとなる」利益供与をしてはならない、と定めている。

違反者に対しては調査・勧告・事実の公表などの措置が取られ、悪質な行為には1年以下の懲役または50万円以下の罰金が科せられる。 

例えば、交渉などの際に暴力団組員を前面に立てて相手を威嚇し有利に進めてその謝礼を渡す、飲食店などがいわゆるみかじめ料を払うといったケースがこれに該当する。

だが条文を読んだだけで具体的にどのような事案が対象となるのか、悪質とはどの程度の行為を指すのか、すぐに分かる人がどれだけいるだろうか。「条文ではっきり定めていないのだから、分かりにくいのは当たり前です」(前出司法関係者)。 

明確な定義がないということは、条例に違反するかどうかを個々のケースごとに捜査当局が判断できるということ。そうなれば当然、県警にとって都合がいいように、恣意的に運用される余地が出てくる。言うことを聞かない企業などを狙い撃ちすることも、可能性としてはありえる。 

「罪刑法定主義(ある行為を犯罪として処罰するためには、犯罪とされる行為の内容、それに対して科される刑罰を、あらかじめ法律によって明確に規定しておかなければならないとする原則)の観点から見ても、極めて問題がありますね」(前出司法関係者)。 

暴排条例に関する当局作成リーフレット

悪しき前例 次々と 

具体的に見てみよう。 

7月1日、指定暴力団・工藤会の前会長の三回忌法要が北九州市小倉北区の民間葬祭場で行われた。葬祭場と契約したのは前会長の遺族だが、福岡県警は「事実上、組(暴力団)が主催する法要」と判断。工藤会や会場を提供した葬祭場が暴排条例に違反する可能性があるとみて、関係者から任意で事情を聞いた

この例で言えば、前会長の法要を行うのが条例のどの部分に違反するのか、非常に分かりにくい。

葬祭場側としては単なる個人の法要を請け負った、通常の仕事との認識しかなかったのかもしれないのだが・・。  

(続く)