4月施行の県暴排条例 批判根強く(2)本質は利権の奪い合い!? [2010年9月24日12:42更新]

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(10年8月号掲載)

暴排条例に関する当局作成パンフ老舗百貨店「井筒屋」(北九州市)が昨年12月、工藤会に1個1万円相当の弁当500個を販売。弁当は同会本部事務所で行った「事始め式」で組員らに配られたという

井筒屋から相談を受けた県警は今年1月、県暴排条例で禁じている「暴力団活動の助長」に該当する可能性があるとして取引をやめるよう注意した  

まだ施行されていない段階で、条例に該当する可能性があるとして企業名を公表した県警の手法は、はたして適正といえるだろうか。



条例施行へ向けた「見せしめ」ではないのか。井筒屋側も本音では相当不満を感じているのではないか。 

このような前例ができてしまうと企業側は今後、警察から取引を行わないよう「要請」されれば受け入れざるをえないだろう。実態はまったくの「強制」である。

 

「定義が曖昧な条例をこのように恣意的に運用された上、マスコミを通じて大々的に報じられるとなると、企業の方も今後の対応に困ってしまう。そうなると当局側との意思疎通を図る、あるいは良好な関係を保つ目的で警察OBを『顧問』などとして雇う企業も出てくるはず。つまり条例のおかげで、県警にとっては定年後の『天下り先』が増える可能性が高いわけです」(前出司法関係者)。

そうなれば企業にとっては、暴力団に対して「みかじめ料」名目で金を払うか、警察OBに「顧問料・給与」名目で払うかの違いでしかない。

暴力団と当局による利権の奪い合い。これが、「暴排」という大義名分に隠された規制強化の重要な一側面、本質-というわけである。

発想そのものが本末転倒

「本来取り締まるべき暴力団本体ではなく、一般の県民側を取り締まるという発想がそもそもおかしい。本末転倒としか言いようがない」。ある捜査関係者は苦々しげにこう語る。 

先述のように、条例の目的は暴力団の資金源を断つことにある。

「条例がまったく役に立たないとは言わないが、本気で根絶を目指すのであればやはり、潜入・おとり捜査や司法取引を認める法律を作る、あるいは脱税に関する法律を強化するなどの法整備が必要。組織暴力と対峙するにはこうした『武器』が不可欠だ。

しかしおとり捜査・司法取引と言うと必ず『人権の観点から問題がある』と反対意見が出て、なかなか議論が進まない。だからこのような条例が出て来るんだ」(前出捜査関係者)。 

 

別の司法関係者は「暴力団から何らかの被害を受けた企業や個人に対する救済・被害回復のことも考えなければ」と話す。

「条例に従って暴力団への利益供与を拒否したために仕返しをされた場合、この損害を回復する手段は今のところ民事訴訟しかない。これでは『暴力を拒否する勇気を』と言っても難しい。県民が条例と暴力団との間で板挟みになってしまう」 

暴排条例に関する当局作成リーフレット

条例施行に絡んでマスコミは「許すな暴力」などとキャンペーンを張り、各自治体主催の暴追大会やパレードが大々的に行われている。だがそれだけで暴排が達成出来るだろうか。 

暴力団という存在、組織暴力について、本当はどうしたいのか。そのために必要なのは何か。国民の意思はどこにあるのか。暴排の気運がこれまでになく高まっている今こそ、真剣に議論するべきではないか。 

組織暴力を容認するつもりはない。だが多くの関係者が条例に「問題あり」としているのに県議会はもちろん、マスコミもまったく取り上げない(そもそもこういった連中に何かを期待する方が間違っているのだが)。しかも同様の条例を作ろうという動きが全国各地で起きている。

こうした状況に危機感を覚え、今回あえて本稿を掲載した。