柳川市議会で新会派立ち上げ(2)談合・密室政治からの脱却目指し [2010年12月22日10:25更新]

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(10年11月号掲載)

柳川市議会の様子「田中氏の議長復帰を許せばわれわれ議会は市民の笑い者になる。そんな思いを共有する6人が自然発生的に集まったのです」

新会派「柳川市民クラブ」代表の矢ケ部広巳議員は、こう語る。

「選挙という市民の審判を経たとはいえ、あれだけの騒動を起こした田中氏を、絶対に議長にしてはならない。それには与党会派を離れるしかない、と」  

議長選ではとりあえず当初の目的を達成したわけだが、今後について矢ケ部氏は「現在の市議会はあまりにひどい。本来の議会の役割を取り戻すべくがんばりたい」と意欲を見せる。 



矢ケ部氏の言う柳川市議会の実態とは一体どのようなものなのか。

「例えば出欠です。仕事を理由に退席したまま帰って来ないなど、遅刻欠席は当たり前。こんなことを言うのは本当に恥ずかしい限りなのですが、議員としての最低限の務めさえ果たされていない、それが現実。

これでは、例えば子どもに対して『ちゃんと学校に行きなさい』などと言えないでしょう」  

是々非々を貫く  

柳川市民クラブは次のように方針を定めている。

①議会案件に対する賛成・反対については会派で意思統一はしない。各自がそれぞれ判断する

②柳川市で今何が起こっているのか、何が問題なのか、市民に向けてできるだけ情報を発信し啓蒙活動を行う

③自由闊達な議論を奨励し議会の活性化を目指す 

現在、全国各地で地方議会のあり方が問われている。名古屋市では市議会解散を求めるリコール運動が展開され、市長の行動が何かと話題になっている鹿児島県阿久根市の騒動も、行政や議会の問題が発端である。 

「そんなことなど、当たり前ではないか」との批判もあるだろうが、新たな動きについては率直に歓迎したい。

特に①は重要だ。

過半数を占める会派が常に1つの意見で統一されれば、議会の過半数を得るのは簡単である。波風を立てたくない執行部は多数会派と事前に密室で「協議」。その結果、多くの地方議会で議場でのやりとりが形骸化してしまった。だが会派で意見を統一しなければ、事前協議=談合は出来なくなってしまう。 

矢ケ部氏は「市執行部に対しても議会に対しても是は是、非は非を貫く。密室政治・談合をなくし本来の議会の役割を果たす」と意気込む。他の議会のお手本となるべく、ぜひとも成果を上げていただきたいものである。 

元議長の手腕に「?」  

ただ現実的には今後しばらく、議会運営は混乱しそうな状況だ。

前出地元記者はこう語る。「与党会派、つまり田中氏は議長の他に副議長、さらには各委員会でも主要ポストを抑えてしまった。これでは拮抗する他会派の反発を招くのは必至。せめて副議長は柳川市民クラブに譲るべきだった」 

田中氏が不祥事で辞職した後、政治倫理条例に違反した議員が辞職勧告にもかかわらず居座り続けるなど、柳川市議会は停滞。そのため一部関係者から「政治手腕に長けた田中氏がいれば、こんなことにはならないだろうに」と待望論が浮上し、議員職復帰を後押ししたのだが・・。

「かっては私も田中氏の手腕を評価していた者の1人だったが、今回のやり方は新会派への報復としか思えない。彼の政治能力ははたして本物だったのか、と考え直さざるをえない」(前出記者)。 

 

根回し・談合を軸とする旧来の政治と、自由な議論を掲げる新しい政治。この2つが今後、ぶつかり合うことが予想される柳川市議会。

新会派が目指すように、同市議会は本来の役割を取り戻せるのだろうか。今後も動向に注目していきたい。