(11年4月号掲載) ところがこのほど、2010年度一般会計決算が10年ぶりに黒字となる見込みとなったことが発表され、自治体関係者の間で話題となった。 厳しい財政状況を改善しようと努力を続けてきた大牟田市。人口減、税収減に悩んでいる多くの地方都市も危機感を持ち、同市を参考にして早めの対策を取るべきではないだろうか。 大牟田市が約3億円の黒字となる見込みであることが発表されたのは今年2月。同市は当初、11年度での黒字転換を目指していたが、それが1年前倒しで達成されることになったわけだ。 産炭地として石炭化学工業などが栄えた大牟田市。だが戦後のエネルギー革命で衰退、1997年に三井三池炭鉱が閉山してからは環境リサイクル産業や企業誘致に力を入れているものの市財政は厳しく、1960年から2009年までの50年間で赤字となったのは実に34回。特に最近は09年度まで9年連続で赤字が続いていた。「そのため、夕張市の件よりずっと前から危機感はあった」。同市財政課はこう説明する。 古賀道雄市長が財政再建を掲げて初当選したのは03年。さっそく同年度に「財政改革緊急3か年計画」、05年度には「集中改革プラン(2006~2010)」を策定し財政構造の改善に取り組んだが「小泉内閣の下で行われたいわゆる三位一体の改革で03~04年度以降、地方交付税が大幅に減額されるようになった。 そのためより収入が不足することになり、さらに厳しい対応を迫られた」(財政課)。そこで08年夏、新たに策定されたのが「大牟田市財政健全化計画」である。 この計画では08~11年度の間、歳出削減や税収増、税負担の見直しに取り組み、12年度に黒字転換を果たすことを目指した。 まず人件費。4年間で市職員の数を1117人から922人に削減する目標を掲げた。そして職員給与のカット。市長以下三役は30~35%、一般職員も平均で約9%削減した。 それから税率の改定。09年度から法人市民税率の均等割の部分を標準の1.2倍に、軽自動車税も同1.2倍に引き上げた(九州で唯一実施)。さらに、し尿処理手数料も値上げした。 こうした取り組みの成果で07年度には10億円を超えていた赤字額は徐々に減少し、ついに10年度中の黒字転換が実現する見通しになった上、市の貯金である財政調整基金3億円を初めて積み立てられる見込み。 「目標を前倒しで達成出来たのは、09年度から地方重視ということで地方交付税が増額されたことが原因。ですがやはり、市民のご理解をいただきながら行財政改革を進めたことが大きいですね」と財政課。 (続く)
北海道夕張市が財政再建団体に指定され、事実上財政破綻したのは07年。景気低迷が続く中、「ついに自治体が『倒産』する時代を迎えた」と多くの国民に衝撃を与えた。その時、次の破綻候補として名前が挙がっていたのが、夕張市と同じ旧産炭地、大牟田市である。
改革の姿勢見習おう(1)大牟田市が10年ぶり黒字へ [2011年5月11日12:41更新]
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赤字から一転 初の「貯金」も