経営破綻の可能性も 新こども病院 都合のいい数字、曖昧な見通し [2009年1月19日10:57更新]

タグで検索→ |

noimage

(08年12月号掲載)

福岡市役所移転後の新病院が巨額の借金を背負った状態で「船出させられる」ことはすでに報じた

市は、総額約190億円とされる病院の移転費用のうち約50億円については、PFI方式を導入して民間から募る方針だ。だが人工島の土地購入代、建設費用など約140億円については市がいったんは立て替えるものの、最終的にはすべて病院から返済させることになっているのである。

こども病院は現在、中央区唐人町という非常にアクセスの良い市の中心部にある。そんな場所でも毎年赤字が続いているのに、アクセスが悪いとされる人工島ではたして経営がうまくいくのか。



市は高めに数字を算出 「現実的ではない」の声も 

市は新病院運営の事業収支を試算するための前提条件として病床利用率90%、1日の外来患者数を420人と想定している。現在の病院はそれぞれ80%、約300人でかなり高め。関係者からは「現実的な数字ではない」との指摘がある。 

例えば外来患者数。420のうち300は現在の患者がそのまま継続して通院すると想定。しかし「すでに転院を勧められている患者がいる」(病院関係者)のが現実だ。 

また救急外来患者を30人と計算。ところが先月、一部民放が「夜間救急外来を新病院に一元化する方針を市が検討」と報じると、市は議会で「事実無根」と完全否定。そうなると一体「救急外来1日30人」の根拠は何なのか。

赤字の補てんは? 「現段階では算出してない」  

しかも、仮に市の想定通り患者が来たとしても、新病院は30年平均で毎年17億円の赤字が出ると試算されている(うち移転関連の費用を市に返済する償還金が10億円)。市の数字が「絵に描いたモチ」となった場合、当然赤字は増える。 

現在のこども病院は約8億円の赤字。市はそれを補てん(繰入金)して運営を支えている。大幅に増加することが見込まれる新病院の赤字に対して、市はどの程度の繰入金を想定しているのか。「現在のところ、基準に沿った数値を出していない」(市担当者)。 

赤字がふくらみ、繰入金がそれに追いつかない状態になれば、それは「経営破綻」の文字が現実味を帯びることを意味する。その場合、病院はどうなるのか。担当者は明言しないが、ある市関係者は「民間への移譲もありうる」と話す。 

事実を踏まえ議論を  

「住民投票条例案の否決で、マスコミには『移転先の議論は一段落した』という雰囲気が漂っています。今後は、いかに理想の病院を目指すか、新病院の未来像へ目を向けようということです」(ある報道記者)。 

ちょっと待ってほしい。マスコミは、移転先の問題を含め、議論のベースとなるはずの事実をどれだけ報じて来たのか。ろくに取材・検証もせず、当局発表の情報を散々垂れ流した挙げ句「一段落」はないだろう。 

今回本紙が書いた移転費用の負担に関してもこれまでまったく報じられず、多くの人が誤った認識を持っている。そんな中で新病院の未来像の議論をしても、正しい方向に進むはずがない。まずは事実を市民に伝え、その上で議論しなければ、市の描く「バラ色の未来図」に追随するだけだ。病院経営が破綻した時に「医療の切り捨て」と批判・総括しても遅すぎる。

はっきりしているのは病院の独法化・人工島移転だけ。経営については曖昧な点や市に都合の良い数字・情報操作が多すぎる。現状を見る限り、最悪の結末を迎える可能性はかなり高い。