鮮魚市場で架空取引(2) 福岡市が調査も全容解明は困難な状況 [2009年6月2日11:10更新]

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(09年5月号掲載)

鮮魚市場(福岡市長浜)の正門通常、仲卸業者から魚を買った鮮魚卸業者は、これを小売店や個人消費者に販売する。だが今回の取引では最終消費者へ届いていない(下図参照)。だから、帳簿上は売上高・利益が増えていても、本当の意味での利益は生じていない。

金額を無限に増やし続けることができない以上、いずれ誰かが代金を払えなくなる。 

「その時」は3月にやって来た。B社が代金を支払わず、そのため仲卸業者は中央魚市場への支払いができなくなり取引はついに破綻した。最終的に3者の取扱量は最初のころのほぼ10倍となり、取引総額は40億円に迫ろうとしていた。



仲卸業者2社には中央魚市場に対する計約2億4000万円の未払い金が残された。
(写真=鮮魚市場の正門前)

架空取引相関図

支払い請求に「架空取引だからその必要ない」  

「架空取引だったとはまったく知らなかった。気付いた時には『なぜそんなことになったのか』とあ然とした」。岩永鮮魚仲卸の関係者はこう憤る。 

同社が取引に加わったのは喜平商店のX氏に「販売先を紹介するし、自分が実務を引き受けるのでマグロを扱わないか」と勧められたのがきっかけ。最初は月額で約2000万円、最終的には2億円規模にまでふくれあがった。

だが伝票処理やマグロ運搬などの実務はX氏がほぼすべてやっていたため、実態は把握できていなかったという。 

岩永仲卸は未払い金約9600万円をB社に請求したが、同社は弁護士を通じて文書(4月16日付)で回答。「取引が架空のもので、商品が実際に売買されていなかったことについては、貴社も十分認識されていたはず」「実体のない売買契約に基づいて代金請求権が発生するはずがない」と支払いを拒否した。

「この時初めてだまされたと気がついた」(岩永関係者)。

市場は「実体あった」 と説明 

岩永仲卸は「架空取引でだましていた」として、中央魚市場に損害賠償などを求める意向を伝えた。市場側は「岩永仲卸が(同市場の仕入れ先である)A、B社に転売していたことは知らなかった」「マグロは現実に岩永側に引き渡されている」と文書(4月22日付)で答えた。

だがこれはB社の主張と相反する。市の担当者は「中央魚市場の言う通り、実際にマグロが貯蔵庫に出し入れされていたことは伝票で確認した」という。 

 

今回の一連のマグロ取引は、商品がまったく売買されていない、伝票上だけで金のやり取りをしていた「架空取引」なのか。あるいはマグロが代金と並行して3者間を循環し、売買の実体があった「循環取引」なのか。2つが混在していた可能性もあり、現段階ではどちらとも断定できない。マグロを回したのは架空取引ではないよう装うためだったことも考えられる。

いずれにしても売上高や利益が見せかけであることに変わりはない。そのため本紙は、どちらのケースも「通常の商売としての実体がなかった」と考え、3者間の取引は「架空取引」と表現を統一した。 

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市は現在、関係者から事情を聴くなどして取引の実態を調べている。だが市の権限は市場外の業者には及ばない。またキーパーソンであるX氏とはほとんど連絡が取れないという。もちろん警察のような強制捜査権もない。事態の全容解明は、現状ではとても期待できそうにない。 

岩永仲卸は「こちらはだまされた被害者」として法的措置を取ることを検討している。喜平商店は先月X氏を解雇、現在休業中である。

(続く)