H&Mに賠償命令 福岡地裁 日トレ疑惑に影響か [2010年2月8日12:42更新]

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(10年1月号掲載)

福岡地裁上場予定のない未公開株を購入する名目で出資させられ損害を被ったとして、福岡県などの13人が大阪市の経営コンサルタント会社「人間と産業開発研究所」(H&M研究所、倉原忠夫代表)側に賠償を求めた訴訟の判決が昨年12月末、福岡地裁(写真)であった。高野裕裁判長は、ほぼ請求通りの計約2億4800万円の支払いを命じた。 

H&Mをめぐっては名古屋地裁などでも同様の訴訟が起こされているが、一連の裁判で判決が出されたのは初めて。 

判決によると、同社側は各地でセミナーを開催。未公開株の価格が上場時に数百倍に高騰した例を示すなどして、未公開株の購入名目や、非上場企業への株投資を目的とした匿名組合への出資で、213人に1人当たり約1100万円から約30万円を拠出させた。 



その中にはテーマパーク建設名目で出資金を集めた「日本トレイド」(博多区)の未公開株も含まれる。 

 

高野裁判長はH&M側のこうした行為について「証券業の登録を受けていない同社側による未公開株販売は極めて違法性が高い」と指摘。として原告の主張をほぼ全面的に認めた。

詐欺行為に当たる  

「負けるはずはないと思ってはいたが、こちらの言い分がここまで裁判所に認められるとは正直、予想していなかった」。原告側代理人はこう語る。 

今回の訴訟の重要なポイントは、未公開株の上場話で出資させた行為が詐欺に当たるかどうか。福岡地裁はこの点について「上場の見込みがないのに高額で販売したことは詐欺行為に当たる」と明確に認定した。 

本紙がH&Mについて初めて報じたのは07年5月。福岡で開催されたセミナーでは倉原代表の著書や同代表がエネルギーを注入したという「スーパーサイエンスグッズ」などを販売。「近く上場する、そうなれば価値は何百倍にもなる」などと説明し、会員らに未公開株を販売するという、極めて怪しい実態を紹介した。その後「だまされた」とする被害者が福岡をはじめ各地で続出、H&Mを提訴する事態となっていた。 

H&Mのいかがわしい商法が法廷でも違法行為と認定されたわけで、現在進行中の他の裁判への影響も大きいと見られる。

怒り収まらぬ原告  

ただ、被害者救済という視点に立てば、今後の展望は極めて厳しいと言わざるをえない。 

原告代理人は「損害賠償として請求通りの金額が認められたのは喜ばしいが、実際にH&M側から支払われるかどうかは不透明」と話す。「もし出資金が返ってこなければ、民事裁判で勝訴してもH&M側の行為に対する処罰にならない。そのため、怒りが収まらず刑事告訴を求める原告が多いのが現状です」 

大阪などでは刑事告訴の動きがあることは以前報じたが、詐欺罪で摘発・立件するとなるとかなり難しいのが現実だ。結局のところ、だまされた側の自己責任─となる可能性が高い。

判決が及ぼす影響  

さて、本紙で報じてきた日トレ社のテーマパーク建設疑惑。07年に久山町での計画が頓挫した後、一時は宗像市に計画を移すという情報も流れたが、その後はまったく動きがない。 

H&M側が日トレ社の未公開株を高額で販売していたのは事実。またすでに報じた通り、ある有力県議からH&Mと同様の手口で未公開株を売りつけられた、との証言もある。

これまでのところ、日トレ社への出資者は表立った動きは見せていない。だが今回の判決で、出資金の返還を求めるなど、あらためて責任追及を求める声が上がるかもしれない。