再び動き出したバイパス計画
昨年2月の 県都市計画審議会において、国道3号バイパス(広川~立花)の新規ルートが議題に上がったが、複数の委員(県議)から住民説明の不足などの指摘があり審議保留となった。
国が進めようとしている事業が県の段階でストップするのは前代未聞、この1年半の間、誰も触れない状態で膠着状態が続いていた。
それまで、「バイパスについては古賀先生に頼めばいい」と豪語していた当該地区の首長も ようやく事の重大さに気づきプライドを捨てざるを得なかった模様で、慌ててバイパス化に向けた期成会を結成、ここに来て再び動き出した。
8月17日に八女市、19日に広川町で、福岡国道事務所、福岡県、八女市・広川町の共催で、住民説明会が開催される予定で、住民の対応に注目が集まっている。
総事業費は 当初試算で300億円、ある衆院議員は 600億円はいくという話を土木業者に吹聴して回ったそうだが、本当に 必要な道路なら作ればいい。
しかし弊社
では、2020(R2)年10月から翌年1月にかけて、「歪んだ3号線バイパス」というタイトルで利権絡みの出来レースとして連載、バイパスの必要性に疑問を呈してきた。
審議会においても弊社記事を取り上げて頂き、委員にも問題が共有されたはずだが、動き出したとあっては黙っておく訳にはいかない。
問題が解消した訳ではなく、我々の血税が一部の得をする者に流れていくことになる。
改めて利権の部分に絞り、政治家、国道事務所・県庁・八女市・広川町の職員、そして住民の皆さんに向けて説明するので、それでも進めるのか、今後の判断材料にして頂ければ幸いだ。
古賀先生が持って来てくれました!
バイパスの話が以前からあったのは事実で、毎年 国道3号期成会(鳥栖市・基山町・久留米市・小郡市・広川町・八女市)は、渋滞の激しい久留米市上津町から八女市立花までの区間のバイパス化を国に要望していた。
ところが、2017(H29)年11月の要望書では上津町から広川を除外し、広川~立花までの区間をバイパス化するという内容に変わる。
水面下で事業化が決定したと推測される。
なぜ渋滞区間の上津町から広川が省かれたかは不明だが、政治の力で決まったことを裏付ける現職議員の発言がある。
2017年10月の衆院選挙の演説会場で、福岡7区の藤丸敏議員が「古賀先生が3号線バイパスを持ってきてくれました!」と叫んでいるのを多くの聴衆が耳にしている。
当時、現場にいた人の話では、何のことかよく理解できなかったという。
それもそのはず、一般の人には初めて聞く話、藤丸議員には自民党の政治力をアピールする狙いがあったかもしれないが、正式には決まっていない段階で、特定の政治家名を挙げて道路予算を確保したことを公言したのは 取り返しのつかないミスだ。
仮にバイパスが完成すれば、八女市民や一部の広川町民には多少恩恵があるだろうが、久留米市民には殆どメリットはなし、逆に上津町から広川までの渋滞解消については 先送りされたことを意味する。
また、広川から立花までは、県道82号(久留米立花線)が整備中で、同じ目的で 県道とバイパスを平行させて整備するのは無駄という指摘もある。
更には福岡県議会においても、苅原交差点、上津荒木交差点、二軒茶屋交差点を整備していく必要があると道路建設課長が答弁しているように、久留米市内において 国道3号で懸案となっている渋滞箇所があり、バイパス化による費用対効果がそれらと比較検証されたかも疑問だ。
まず、福岡県全体の利便性を考える政治家や行政職員、そして 久留米市民、広川町民、八女市民の皆さんにおかれては、限られた 300億円もの予算を 本当に このバイパスに使うことが最適かどうか考えて頂きたいと思う。
ルート決定までの表向きの経過
下表は、バイパス化が 国の事業としてテーブルに乗り ルートが決まるまでの「表向きの経過」である。
藤丸議員が「古賀先生がバイパスを持って来てくれました」と叫んだのが2017(H29)年10月なので、全てその後の出来事、事業の必要性を帳面に残すためのアリバイづくりだ。
初めて 国道3号期成会から国に、「広川から立花まで」のバイパス化の要望書が正式に提出されたのが 2017(H29)年11月、改めて注目してほしいのは、2019(R1)年11月時点においても 国の方では「4車線拡幅」を検討していて、バイパス化が決定事項ではなかったこと、そして、2020(R2)年5月になって「山側ルートのバイパス化」に絞り込まれ、6月に最終ルートが決定したことである。
この間、何も知らない市民・町民の中には、もし自分が所有する土地を国道が通れば国が買い上げてくれる、そんな淡い期待を抱いた方もおられたのではなかろうか。
しかし、これは初めから出来レース、市民・町民は茶番劇に付き合わされただけだった。
八女市役所で「本地区を通るのが大前提」に ルート原案が作成されたのが2009(H21)年、いわゆる山側ルートだ。(詳細は次回)
その後、2014(H26 )年頃から現実味を帯び、2017(H29 )年には水面下で山側ルートで事業化がほぼ確定したことが推測される。
以下、その根拠について述べる。
広川町の3つの事例
以下に広川町の3つの事例を挙げる。
事例1.上広川小、移転先候補の農地取得(2014年10月)
今回のルートは、上広川小学校の校舎を横切るため 建物を移転建築することになっている。
当初 国が提案したのは プールの一部にかかるルートだったが、2020(R2)年5月に 広川町から「バイパスによって集落が分断されるのを避けたい」「学校の真横に盛土のバイパスが走ると、教育環境としてよくない」という要望があり修正に応じている。
だが、これこそが出来レース、2019(H31)年4月の町長選挙の集会で、渡邉元喜町長が「バイパスを通して上広川小学校を建て替える」と発言しており、最初から決まっていたことが地元の人なら誰でも知っている。
このことで、町は負担なしで小学校を建設でき 業者も潤うので、地元からは異論は出ていない。
現在地から距離が離れておらず 十分な面積がある場所というと、地図上でも候補地が限られる。
2014(H26)年10月、町長と親しい不動産屋が 移転の有力な候補地と思われる農地 約1000坪を取得し、以後他人に米を作らせている。
地元では なぜ不動産屋が農地を購入したのか憶測を呼んでいたが、国の計画段階評価が決定した後の2019(R1)年9月、アパートか住宅を建てるという理由で 農振除外申請を行い開発の準備を進めている。
この場所に小学校が移転してくれば、ただ同然で買った土地が かなりの値段で売れるのは確実だ。
事例2.広川町日吉で農地の大規模造成(2017年9月)
始めたタイミングと開発理由の稚拙さで笑えるのが、広川町日吉の開発行為だ。
場所は県道82号(久留米立花線)、広川インターから東に来て突き当たったT字路の東側の小高い丘である。
元からバイパスの起点になる可能性もあり、目利きのきく不動産屋なら手を付けたい場所だ。
当該用地の一人の地権者によると、この場所は20年以上前から「事例1」の不動産屋が全ての地権者から委任を取り付け、開発する算段を整えていたという。
藤丸議員が叫んだ年の 9月27日、地権者名で開発行為の申請が農業委員会に提出されている。
目的は果樹園を作るための農地の改良、3年間で 約1万400平米の山林から、土砂約2万5000立米を採取し、梨の木 約48本、梅の木 約15本を植栽するという計画で、造成費用は約1200万円とされている。
梨の木 約48本、梅の木 約15本のために 1200万円かけて造成すると聞いて、素直に信じる者はいないと思われるが、農業委員会で問題視されることはなかった様だ。
現在は 苗木が植えてあるが、実がなるまであと何年かかるやら。
一つ言えるのは、今すぐにでも道路や工場に転用できる農地に変わったということである。
事例3.ルート上の農地を取得(2017年7月)
同じく、藤丸議員が叫んだ年の7月31日、農地 約1000坪(下図の緑色の2ヶ所)を購入した人物がいる。
建設資材を販売する事業者で 事例1の不動産屋とは旧知の間柄だ。
農地の売買は営農意欲の高い人に許され、広川町農業委員会の内規では「所有権移転後3年間は農業を行う」とある。
しかし、現地(写真)を見る限り意欲はなさそうだ。
以前の所有者は、「相続した土地だが、遠方に住んでいて管理できないので売却した。バイパスが通ることが分かっていれば売らなかった」と話した。
私的要求から始まったバイパス
以下は、取材で職員OBらから聞き取った内容をまとめたものである。
1977(S52)年から4期務めた斉藤清美市長は、八女市本地区を開発して工業団地を作る「八女市東部開発構想」を掲げていた。
工場を誘致するには、広川インターから同地区までのアクセス(約 6km)が課題で、バイパス整備の話はこの時代まで遡る。
同地区に住む土地ブローカーのT氏は、当時から土地の買収話をまとめる力に長けており、自宅の近くに工場を誘致し成功させている。
1995(H5)年に野田国義市長に変わってからは同構想は立ち消えとなったが、T氏の事業意欲は衰えることなく本地区の周辺の農地や山林を積極的に買収し、地元住民の反対をものともせず、農業委員会をうまく丸め込めながら 産廃処分場の誘致を実現させている。
2008(H20)年11月、野田氏が国政に転身し、代わって市長になったのが県議会議員だった三田村統之氏、旧知のT氏は早速バイパスを本地区に持ってくるように要求している。
三田村市長は市長になる前から金欠病でT氏に弱みを握られていたというのは地元で知られた話、というのも T氏本人が事あるごとに「三田村に金を借りてることをバラすと言えば何でも言うことを聞く」と知人に話しているからだ。
実際、八女市本地区の市道は近隣と比較にならないほど整備が行き届いており、職員はT氏の対応に苦慮してきたという。
当時のバイパスルート作成の経緯を知る職員OBは、弊社の取材に応じ、「T氏から市長に圧力が掛かっており、2009(H21)年、市長から職員にバイパスのルートを作るよう指示があった。T氏の土地を必ず通すことが前提で、民家をなるべく避けるようルートを考えていた」と語った。
その時描いたルート原案と 現在の国が示した山側ルートを比較したのが下図である。
後述するが、黒い円がT氏が不動産情報としてホームページで宣伝している箇所である。
これは衝撃的な話である。
国・県・八女市・広川町、そして住民を巻き込んで動いているバイパス計画が、たった一人の私的要求によって始まったというのだ。
翌2010(H22)年には、T氏が「3号線バイパスは俺が持ってきた」と自慢して話すのを地域の知人や業者が聞いているので、前年の要求に対して 前向きな回答を得ていたものと思われる。
それを証明するのが下図だ。
2011(H23)年3月に八女県土整備事務所が作成した今後の整備箇所等を記した管内図には、職員が描いた原案通りのルートで「国道3号バイパス事業」と明記されている。
ルート決定前にホームページで告知
藤丸議員が「古賀先生がバイパスを持って来てくれました」と叫んだ翌2018(H30)年5月、八女〇〇開発株式会社という法人が設立されている。
代表者はT氏と市職員OBのJ氏、同社が同年6月、現在の不動産売却物件情報で「八女北部工業団地」としてホームページに掲載したのが下図で 円で囲んだ部分が対象となっている。
藤丸議員が口を滑らしたことを除けば、表向きにはバイパスの話は一切ない時期、ホームぺージには「国道3号線バイパスの開通(来年着工予定)」と記載されていた。
現在ホームページは削除されているが、T氏は丁寧に、バイパス化が決定される前の段階でバイパス情報を入手していた証拠を残している。
2019(H31)年3月、国が「広川八女地域の幹線道路に関する検討会」でバイパスの概略ルート・構造等検討に着手する準備を進めることを決定した後、T氏は土地の取得を加速させ農業委員会の許可もないまま大規模造成を始めている。
下図、ピンクの線が 今回決まったルート、黒い円が 八女北部工業団地として同社が示した範囲、黄色がそのT氏が買収に掛かっている地域、緑色が造成している地域を示しているが、これは偶然ではなくT氏の要求に従った必然である。
それでも進めますか?
T氏の要求通りのルートで事業化は最終決定目前である。
農地の大規模開発は終わり 今すぐにでも工場用地に転用可能で、莫大な利益を手にすることになる。
本当にこういうことが まかり通っていいだろうか。
2009(H21)年にルート原案作成を指示したのは市長だが、市長の一存でルートが決められるはずもない。
時を置かずして2011(H23)年3月には 県土整備事務所の管内図に「国道3号バイパス事業」と明記されていたことからすると、後盾となる国会議員が介在していたと思われ、T氏はその政治家の弱みまで握っているか、或いは強固な関係があったと推測される。
それが古賀先生かどうかは不明だ。
しかし繰り返すが、2017(H29)年に藤丸議員が「古賀先生がバイパスを持ってきてくれました」と叫んだのを多くの町民が聞いている。
藤丸議員は今回の内閣改造で内閣府副大臣に任命されるだけの人物、水面下で決まったバイパス化をリップサービスで伝えようとした正直者で、ありもしない話で有権者を騙すはずはない。
日本中に国道の整備を心待ちにしている 政治家、そして住民がいる。
その優先順位に特定の政治家が力を発揮するというのは噂では聞いていたが、現実にあるとなると看過することはできない。
事業費は 最低でも300億円、この予算があれば どれだけの整備ができるか。
地方議員や行政職員の間で 本当に整備が必要な国道は、同じ国道3号でも久留米市内の渋滞区間という認識で一致するはずだが、今となっては流れに身を任せるしかないだろう。
先月21日には福岡県が国交省道路局長宛に「早期事業着手を求める要望書」が提出された。
県が都市計画審議会に付随する住民説明会を開催する前に要望を出すというのも呆れた話で、かなり焦っていることが窺える。
国民の血税を使った我田引水のバイパスが、もう後戻りできないところまで来ている。
関係者におかれては下記表をご覧になり、それでも進めていくかどうか判断して頂ければ幸いである。
ー 了 ー