自民県連に何が? 知事候補「ほぼ決定」一転、白紙に  [2011年1月6日11:10更新]

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(10年12月号掲載)

福岡県庁今春に控える福岡知事選で、自民党が元通産官僚の擁立を検討していると昨年、一部マスコミが報道。だがその後、同党県連内から激しい反発が起き、事実上の白紙状態となってしまった。 

昨年11月の福岡市長選で擁立候補が圧勝、勢いを取り戻した感のある自民。だが知事選候補をめぐるごたごたは、国会議員・県議間の対立構図をあらためて浮かび上がらせる形となった。 



 

昨年11月20日、自民が知事選候補者として元内閣広報官の小川洋氏を擁立する方向─と、地元紙や一部全国紙が報じた。ところが報道直後、国会議員や県議から「まったく聞いていない」「頭越しだ」などといった怒り・不満の声が噴出。その結果、小川氏擁立はいったん“御破算”となった。 

小川氏は京大卒業後、旧通産省に入省、特許庁長官などを歴任した。「麻生渡知事とそっくりの経歴。トップの座を譲った後も県政に何らかの影響力を持ちたい麻生知事の思惑が透けて見えますね」とあるマスコミ記者は語る。

確かに知事は5選不出馬は表明したものの、政界からの引退には一切言及していない。「そういった点も含めて、タマとしては結構良かったと思うのですが・・」(前出記者)。 

 

ではなぜこのような事態を招いてしまったのか。 

今回、小川氏擁立の情報をマスコミに流したのは、北九州地区選出のN県議周辺とされる。N県議は当選7回を数えるベテランで同地区では強い影響力を持つという。麻生太郎元総理の「番頭格」を自認、福岡市長選では連日、高島宗一郎候補(当時)の事務所に詰め、知事選候補者の選定に関しても元総理や麻生知事の意向を受けて本人と面談するなど、調整に動き回っていたという。 

「ところが実は、これとはまったく別に、N県議と仲が悪いK県議も小川氏擁立へ向けて動いていた」と前出記者。「K県議は自分の知らないうちにN県議も動いていたことを新聞報道で知る形となり、へそを曲げてしまったのです」 

筑後地区選出のK県議は当選6回、県議会議長や自民県議団会長を歴任した実力者だ。K県議も小川氏と直接会い、水面下で地元財界関係者の地ならしを進めて同氏支援の約束を取り付けていたという。 

さらに、麻生元総理と対立しているとされる古賀誠衆院議員もN県議=元総理側の動きに反発。それぞれが同じ方向を目指していたのに結局、流れてしまうという実に「珍妙」な結果になってしまった。 

 

自民県連ではかつて、会長の座をめぐって激しい綱引きが行われるなど国会議員と県議団とが対立。今回のごたごたは、県連内で大きな力を持つ県議団も決して一枚岩ではなく、有力県議同士の間にもあつれきがあることを示したものと言えるだろう。 

ある自民関係者はこう語る。「N県議は福岡市長選で『圧勝は自分の功績だ』と吹聴、反発する地元県議や市議からは『よそ者が何様だ』といった声が漏れていた。今回の一件は、市長選に続いて知事選でも手柄を立てたい一心で動いたN県議の完全な勇み足。残念だが、小川氏自身の政治センスもなかったと言うほかない」 

いったんは決着寸前まで行った自民の候補者選び。小川氏の可能性が完全に消えたわけではないだろうが県連内部の対立がある以上、結論が出るまでには時間がかかりそうである。