(11年3月号掲載) 取引は架空だった、つまり不正な取引だったとなれば、そこで生じた債権・債務は無効とみなされる可能性が出てくる。中央魚市場から代金を返してもらいたい岩永としては、こうした事態を避けたと見られる。 そのため地裁は、取引の有無についてはマグロが保管されていた冷蔵庫からの出庫記録や納品書、受領印などの形式的な要素で判断するに止まった。 さて、判決を詳しく見てみると、1つの疑問が生じてくる。 09年2月に行われた取引では記録上、福岡中央魚市場から岩永へはマグロが納入されたが、岩永からながよしへは納入されていない。地裁もこの点は認めている。 契約ではマグロは中央魚市場→岩永→ながよしの順に流れていることになっているが実際には、中央魚市場が保管を委託していた冷蔵庫から直接、ながよしに搬送されていたという(下図参照)。 それでは、1億円近くもの大量の冷凍マグロは冷蔵庫を出た後、一体どこへ消えてしまったのか。 この疑問に対する答えは裁判では明らかになっていない。福岡地裁が取引があった証拠としているのは先に述べた通り、出庫記録や納品書、受領印などの書類であり、X氏は「取引が実際にあったように装っていたのだから、これらがそろっているのは当たり前」と話す。 地裁はあくまで外形的に「取引があった」としているだけで、これをもって「一連の取引は実体があった」とは認定しておらず、疑惑の核心には触れていないのである。 重要なのは、最後の取引でながよしがマグロを受け取っていないという事実だ。すなわち、書類上、取引が成立していたように見えるだけで、実際にはマグロは存在していなかった=取引は架空だったと考えるのが自然ではないか。 岩永と同じく中央魚市場と争っている喜平商店。破産手続きに関連して同地裁は昨年1月、一連の取引を「実体のない架空取引だった」「中央魚市場側は積極的に関与した」と認定、同商店に対する福岡中央魚市場の債権は「存在せず無効」と決定した(10年6月号既報)。 これを不服とした中央魚市場は、査定の決定を取り消すことなどを求めて破産管財人を提訴。管財人側は「中央魚市場幹部、担当者らが架空取引と知りながら続けていたのは明白で、これによって得た利益は不当利得に当たる」として市場に支払った約1億5000万円の一部を返すよう反訴(訴えられた被告が逆に原告を訴えること)した。 喜平商店代理人は岩永とは違い「取引は架空だった」との主張を前面に押し出している。それだけに、今後の裁判の行方が注目される。 岩永鮮魚仲卸の請求が棄却されたことで、中央魚市場関係者はほっと胸をなで下ろしていることだろう。だが架空取引に関する疑惑についてはむしろ、より深まったと言えるのではないだろうか。
今回の裁判の中で、原告である岩永鮮魚仲卸側は「一連の取引は実体があったのか、架空だったのか」という疑惑の核心については触れなかった。
大量のマグロどこへ? 架空取引疑惑 「転売されず」地裁認定(2) [2011年3月30日12:42更新]
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核心触れず 深まる疑惑
喜平商店側は「架空」主張

