再び「印象選挙」か、それとも政策で選ぶ本質選挙か
前市長の辞職に伴う田川市長選は、7月5日告示、7月12日投開票で行われる。田川市選挙管理委員会が日程を公表しており、突然の市長交代を受けた選挙となる。今回の選挙で問われるのは、単に「誰が次の市長になるか」ではない。ここ数年、田川市政を覆ってきた疑惑、批判、告発、印象操作、足の引っ張り合いの政治から、市民が本当に抜け出せるのかという点である。村上卓哉前市長は、女性職員へのセクハラ行為が第三者委員会に認定されたことを受け、5月31日付で辞職した。前市長は前回選挙で「田川市を取り戻す」と訴え、二場公人前市長の市政運営への批判を追い風に当選した。しかし、その市政が任期途中で自らの問題により幕を閉じたことは、市民に重い失望を残した。政治家の私生活がすべて公的問題になるわけではないが、職員との関係、権力関係、市政混乱につながった問題であれば、トップとしての品格と説明責任は避けられない。
田川市の課題は待ってくれない。令和8年6月1日現在の住民基本台帳人口は4万3630人。人口減少、少子高齢化、地域経済の停滞、教育、公共施設の老朽化は、誰が市長になっても直面する現実である。つまり、今回の選挙は「雰囲気のよい候補」「批判がうまい候補」を選ぶ選挙ではなく、停滞した市政を実際に動かせる候補を選ぶ選挙でなければならない。
その中で、最も注目されるのが、6月8日に無所属で立候補する意向を表明した二場公人元市長である。前回選挙では、二場氏は疑惑や批判への対応に追われ、政策や実績を十分に訴えきれなかった面がある。もちろん、過去の市政運営について説明責任がなくなったわけではない。情報公開、周辺自治体との関係、行政判断の透明性は、今回も市民が確認すべき論点である。
一方で、前回の選挙が「印象」に傾きすぎたことも、今となっては冷静に検証されるべきだろう。批判や噂と、確認された事実は分けて考える必要がある。選挙に勝つための言葉は強く響く。しかし、市政を前に進めるには、国、県、民間企業、職員組織、市民を動かす実務力が必要になる。その点で、二場氏が市長時代に進めたソフトバンクとのDX・ICT連携、テックマヒンドラ・コミュニケーションズ・ジャパンとのDX推進パートナー連携などは、田川が外部の力を取り込み、次の産業や行政改革に向かおうとした実績として再評価の対象になり得る。
対抗軸として名前が挙がる佐々木まこと元県議は、6月2日に立候補の意向を表明した。県議経験があり、「対立から解決へ」と訴える姿勢は一定の期待を集める可能性がある。ただし、佐々木氏は過去に一般女性との不適切な関係を理由に県議を辞職している。本人は法的問題はないと説明し、パワハラや不倫疑惑については否定しているが、村上前市長の問題で市政が混乱した直後だけに、有権者は公私の線引きや説明責任について、より厳しく見ることになるだろう。
また、新人の浦野仁氏は4月15日に立候補の意向を表明しており、「田川、新時代」を掲げる。若さや発信力、学習塾経営の経験は、閉塞感のある田川に新しい空気をもたらす要素ではある。ただ、市長職は発信力だけでは務まらない。財政、議会、人事、公共事業、防災、福祉、教育、企業誘致を同時に動かす総合行政の責任者である。若さを評価するにしても、具体的な政策、実行体制、財源の裏付けを見極める必要がある。
今回の市長選で避けて通れないのが、新庁舎整備である。田川市の新庁舎整備基本構想素案では、概算事業費は約119.3億円。財源は自己資金約41.1億円、地方債約78.2億円を見込むとされている。現庁舎の老朽化や耐震性の課題は事実であり、建て替えそのものを単純に否定する話ではない。しかし、119億円規模の事業を「必要だから進める」だけで済ませてよいのか。防災拠点、行政DX、市民サービス、周辺地域の再生、民間投資誘導まで含めたロードマップがなければ、一時的な建設需要だけが残り、将来世代への負担となりかねない。
市民が今回見るべきなのは、誰が誰を批判したかではない。誰が数字を見ているか。誰が財源を語れるか。誰が庁舎を単なる箱モノではなく、まちの再起動拠点として描けるか。誰が教育、人口減少、地域経済を一体で語れるかである。
前回の選挙では、批判の勢いが結果を動かした。だが、批判によって市長を代えることと、まちを良くすることは同じではなかった。今回、市民が再び印象や感情に流されるなら、田川市政はまた同じ混乱を繰り返すことになる。
二場氏にとって今回の選挙は、単なる返り咲きの機会ではない。前回十分に伝えきれなかった実績と政策を、冷静に、具体的に、市民の前に示せるかが問われる選挙である。同時に、有権者にとっても、噂やしがらみではなく、政策と実行力で市長を選び直す機会である。
田川は、もう一度問われている。
印象で選ぶのか。批判で選ぶのか。
それとも、停滞を動かす政策で選ぶのか。

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当日配布されたチラシ























