大島産業の社員で 施工不良を起こした工事の「管理技術者兼現場代理人」だったK氏が原告となり、NEXCO中日本の社長や現場の監督員を被告として、2021(令和3)年9月16日付で福岡地裁小倉支部に提訴した。
内容は、工事の中で監督員から様々な人格否定発言などパワハラがあり、心を病んだので 慰謝料として二百数十万円の支払いを求めるというもの。
提訴から2年が経とうとしているところだが、8月7日に小倉地裁で口頭弁論が行われた。
昨今の裁判を含むハラスメントの争いでは、訴えた側が有利な風潮がある。
誤解を恐れず言うと、仮に契約上弱い立場の者に何らかの非があったとしても、その非が問題になることは少ないように思われる。
録音や文書の証拠が残っていれば 尚のこと有利だ。
過去の裁判の中でそれを学習し、今度は自分たちがそれを利用しようと考えたのではないかと 関係者は話す。
2018(平成30)年8月、当時の大島産業は十分な下請業者の確保もままならない中で、関東の工事を受注、施工箇所が多岐に及ぶも十分な管理技術者の配置ができず 工程進捗に大幅な遅れが出ていた。
見かねたNEXCO中日本側の監督員が、休日返上で本来受注者がするべき業務を相当量手伝ったそうだが、大島産業が増員せず一切改善が見られなかったということを、複数の下請関係者から聞いた。
被告の監督員の肩を持つつもりはないが、受注しておきながら やるべきことをやらない企業の責任はどうなるのか。
最終的には施工不良を引き起こしている。
工程が決まっているのに、書類も出さない、出し方も分からない、手伝っても増員しない、急に下請がいなくなる、最終的には工期が伸びる、となれば、監督する側として 厳しい言葉の一つも言いたくなるだろう。
そうした状況下で、とにかく早く対応してほしいとの思いで送ったメールの内容が、管理技術者を罵倒し人権を侵害したという主張なのである。
第三者調査委員会の報告書には、「一部不適切な表現は見られるも 施工上の問題が生じている中、大島産業に書類の提出や修正の催促をする目的として正当なものだったと言える」と記されている。
今回の訴えは大島産業の社員個人だが、NEXCO中日本側は個人が単独で訴えたと受け止めていない。
本裁判で NEXCO中日本にパワハラがあった事を一部でも認めさせて、建設工事紛争審査を少しでも有利に進めたい狙いがあると見ており、全面的に争う姿勢だ。
NEXCO中日本にとっては当該工事が政治案件化し、副社長以下コンプライアンスを軽視したことが ブーメランになって返ってきている。
改めて社内のガバナンスについて考え直す良い機会になったことだろう。
大島産業については、このような類の裁判はマイナスと見る関係者が多い。
パワハラや施工不良、更に建設業法違反で処分されるなど、これまで定着した負のイメージは簡単に払拭できるものではない。
地元で建設業と運送業の営業を継続していくためには、こうしたイレギュラーな技を使うのではなく、地道に地域貢献をしながら信頼回復に努めていくことが重要ではなかろうか。
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パワハラ企業のトンデモ裁判(後編)
パワハラ企業のトンデモ裁判(前編)
㈱大島産業(宗像市)のCEOが、雇用していたトラック運転手を丸刈りにして高圧洗浄機で水を噴射したり、川に入るよう命じて打ち上げ花火で狙ったりした写真をブログで公開、慰謝料等を求め運転手が提訴し最高裁まで争い、2019年9月、大島に約1500万円の支払いを命じる判決が確定した。
当時これほど壮絶なパワハラが現実に存在し、CEO自身のブログで公開していたことが話題になり、関係者に衝撃を与えた。
→ 丸刈りや土下座、パワハラ認定 1500万円支払い命ず(朝日新聞 2018年9月15日)
その大島産業の名前が 再びマスコミに登場したのが 2020年10月、あの文春砲だった。
NEXCO中日本が発注した中央高速道の耐震補強工事で 鉄筋不足等の施工不良が発覚、国会でも問題となった。
実は、発覚後約3年が経とうとしているのに、NEXCO中日本と大島産業の間で 未だ決着に至っていない。
当時施工不良の対応に追われたNEXCO中日本は、同年12月に大島産業との契約を工事途中で打ち切ったのだが、補修工事の費用も含め 最終的な支払額が未だ決定しておらず、建設工事紛争審査会の裁定に委ねているという。
そもそも当該工事は、当初の契約金額と工期が 5回に亘り変更になっている異例の工事だった。
当初契約金額は 6億0242万円、落札率74%で 低入札調査の対象となるほど安く受注したのだが、最終的に13億2910万円と 2倍以上に膨らみ、工期も1年以上延期されている。
その原因は、第三者調査委員会の報告書に詳しいが、工期遅れは下請の手配ができなかったことや、交通規制の保安費に4億5000万円が請求されるなど不透明な部分が多いことが記載されている。
→ NEXCO中日本 E20 中央道を跨ぐ橋梁の耐震補強工事施工不良に関する調査委員会 報告書(2021年7月22日)
当時のNEXCO中日本の副社長への忖度もあり、そうしたことが有耶無耶になったまま 契約変更が行われたのが2020年10月23日、文春によるスクープはちょうどその直後のタイミングだった。
調査の結果鉄筋不足が現実のものとなり、12月には契約を解除、約4億円をかけてNEXCO中日本は自ら補修工事を行なっている。
NEXCO中日本としては、水増し請求など積算が不透明なことも第三者調査委員会で指摘されており、補修費用の請求を含め 適正な支払いをしたいという立場、大島産業は 契約解除はNEXCO側の都合なので契約金額を支払ってほしいということで折り合いがつかず、建設工事紛争審査会で審査をしている段階だ。
こうした中、例の鉄筋不足の現場担当だった大島産業の管理技術者K氏が原告となり、NEXCO中日本の監督員や支社長らに対しパワハラを受けたとして二百数十万円の慰謝料を求める裁判を起こしていることが判った。
パワハラが認定された企業の社員が パワハラ裁判を提訴しているということで、実に興味深い裁判だ。
ー 続 く ー
厳格な県、生ぬるい国
建設業者の監督は、2つ以上の都道府県の区域内で営業する場合は国交省が、1つの都道府県の区域内のみで営業する場合は都道府県が行っているが、その指導や処分のあり方は国や各都道府県によって異なっているという。
福岡県は1月11日付で㈱大島産業(宗像市、以下大島)に対し、昨年の9月に続き、2回目となる営業停止処分(17日間)を科した。
処分理由は、同社がNEXCO中日本発注の耐震補強工事で、重大な瑕疵を生じさせたこと、また福岡県発注の県道橋梁工事等で虚偽の施工体系図等を作成したこととしている。
一連の調査で、大島産業及び関連した100%子会社の ㈲エイチ・ワイ・ディ(宗像市)、更には 塚本總業㈱、塚本不動産㈱(いずれも東京都)等については、これまでの処分の枠外の建設業法違反のほか、有印私文書偽造、税法、会社法違反など 法令違反の疑いが数多く露見しており、今後 県から各所轄庁への通知が出されると思われる。
建設業の監督官庁として 福岡県は実に厳格に対処している。
それに比べて 国交省は生ぬるい印象を拭えない。
最近では、国交省が JR九州住宅㈱の不法行為について、2年前に情報提供を受けていながら頑として動かなかったが、同社の監督が県に移ってからは 県が素早い処分を下している。
国交省におかれては、まさか国会議員への忖度があるとは思わないが、建設業界は暴力団との関わりや、実体のないペーパー会社で売上を伸ばす企業が出やすいため、今後もしっかりと監視していくことを期待したい。
大島産業に営業停止処分
福岡県は11日、㈱大島産業(福岡県宗像市冨地原1791-1)に令和4年1月25日から 同2月10日までの17日間、建設業に係る営業のうち 公共工事について営業停止処分とすることを発表した。
処分理由は、NEXCO中日本発注の中央自動車道 天神橋他6橋耐震補強工事で、粗雑工事を行ったことにより工事目的物に重大な瑕疵を生じさせたこと、及び 以下の県発注工事で 虚偽の施工体系図を提出したとしている。
・県道 玄海田島福間線 川端橋橋梁下部工(P1)工事
・県道 遠賀宗像自転車道線 道路改築工事(6工区)
・県道 直方宗像線 道路改良工事(6工区)
大島産業は、昨年8月31日にも NEXCOの工事2件について虚偽の施工体系図を提出したとして 10日間の営業停止処分を受けているが、前回より重い処分となった。
今後、前回同様 国や自治体などで指名停止措置が発表されることが予想される。
NEXCOと大島産業(48)■ 信用されない経営幹部
中日本は、調査委員会の最終報告を受けて 7月29日、再発防止策を公表した。
内容は、
1.事業計画の策定と執行のプロセスについて
2.組織体制・人材育成について
3.ガバナンスについて
4.コンプライアンスについて
と 問題点に対する調査委員会の提言に、しっかり応えた格好だが 重要な点が抜け落ちている。
それは、コンプライアンス担当役員が人事を掌握している点だ。
今回、本社、支社、事務所、それぞれの部署で、関係した社員が コンプライアンス違反に対し抵抗を試みているが、2020年7月の人事で一部しゅん工を取り計らった者が異例の大出世をした一方、抵抗していた管理職は左遷されており、社員の意欲を削いでいるという。
中日本には倫理行動規範があり、公益通報窓口(コンプラホットライン)も設置されているにも拘わらず、誰も利用しなかったのはコンプライアンス担当役員を信用していないからにほかならない。
本来ならば、社外取締役にコンプライアンス担当として弁護士を招聘するべきで、少なくとも人事とは切り離すことが必要と言えよう。
中日本の社員の中で、経営幹部に対する不信感は根強いという。
どんなにキレイごとで再発防止策を並べても、人事を切り離さない限り 信頼回復は難しいだろう。
ー 続 く ー
NEXCOと大島産業(47)■ 国会議員の介入
元国交副大臣、自民党の建設族の国会議員が直接の問い合わせをしたとなれば、圧力以外何ものでもない。
現在は農水副大臣を務める 宮内秀樹議員である。
NEXCO中日本と大島産業、民間企業同士のトラブルに国会議員が介入したことが あり得ないことだ。
しかも、NEXCO各社は国交省に対して立場が弱いという。
それを分かった上で、敢えて国交省を通して問い合わせ、中日本の社員を議員会館に呼び出している点に 意図が感じられる。
パワハラの訴えがあった場合、国会議員であれば 弁護士を通じての問い合わせを勧めるべきで、私企業の営業のために 国家公務員を利用したことになる。
また、協議において 「適正利潤」や「設計変更」といった中日本の社員のメモからすると、契約金額の増額につて圧力をかけたことが窺われ、事実であれば問題だろう。
大島がネクスコの耐震補強工事に乗り出したのは、宮内氏が大島の役員に 「耐震補強工事は儲かるから」と勧めたのが始まりとの工事関係者からの証言もある。
その後本件工事を低入札で受注できたが、当初より施工能力に問題があり契約解除もあり得たが、2019年9月のパワハラ騒動に宮内氏が介入したことで、大島は工事を継続、中日本の職員を委縮させ管理が不十分になったことが 鉄筋不足・鉄筋切断等に繋がった。
更に、宮内氏が直接設計変更にも言及してから、大島は工期の延長と工事費増額の要求を強めるようになり、通常では考えられない増額と工期延長に至っている。
これらは、中日本のガバナンスの問題と片づけるわけにはいかないだろう。
第三者委員会の調査報告書では、国会議員の関与も明らかになっていることから、現職の閣僚でもある宮内氏におかれては、一連の関わりについて丁寧な説明が求められている。
ー 続 く ー
大島産業に指名停止
9月1日、九州地方整備局は、㈱大島産業(福岡県宗像市冨地原1791-1)に令和3年9月1日から 同10月12日までの6週間、同局発注の一般競争入札の指名停止を実施すると発表した。
http://www.qsr.mlit.go.jp/site_files/file/n-kisyahappyou/r3/21090101.pdf
同社が下記2つの工事で 「虚偽の施工体系図等を作成した」ことは、建設業法第28条第1項第2号に該当するとして、監督官庁である福岡県より 10日間の営業停止処分となったことを受けてのもの。
- 中央自動車道天神橋他6橋耐震補強工事(中日本高速道路㈱発注)
- 九州自動車道久留米高速道路事務所管内南部地区橋梁耐震補強工事(西日本高速道路㈱発注)
https://corp.w-nexco.co.jp/procurement/contest/banlist/pdfs/r3/0901/01.pdf
NEXCOと大島産業(46)■ 責任を押し付けられた支社長
一方のNEXCO中日本、第三者委員会の調査では、要求しても出ない書類や 関係者間で主張に齟齬が見られる点があり、嘘や隠蔽がまかり通り真相は明らかになっていない。
今回の工事では、2020年3月に約2億6000万円分の一部しゅん工が、そして 計5回の契約変更で 372日の工期延長と 約7億2000万円の増額が行われたが、いずれも未提出の書類がある中での承認で、社内規約に違反しており、それを指示した者、認識しながら実行に携わった者は、程度の差はあれ背任の疑いがある。
調査報告書によると 全ての指示、責任が八王子支社長にあるような印象を受ける。
本来事務所をチェックすべき支社が、大島の意のままに動き、最後の契約変更では、支社が本社の工務部門の決定を覆し 大島の意に沿った増額を認めている。
これまで本社の工務部門の決定が 支社に覆されたという前例はなく、内規に反していることが判っている中で、支社長個人が それだけの決定を下せるかというと疑問だ。
当然、相応の後ろ盾、つまり 上層部の了承があったと考えるのが自然である。
社内調査と第三者委員会の調査で 戦犯確定的となった支社長は、次の人事で本社異動が決まっていたが 6月中に辞職願を出し退職したという。
現在は、東京支社内にある子会社のアドバイザーとして再雇用され、事実上の蟄居状態という噂だが、社内では同情する声も多い様だ。
また、1年前に契約変更のミッションを受けて送り込まれてきた八王子支社の担当部長、担当課長、事務所の所長らは、7月5日から始まる会計検査前の 7月1日付の人事異動で、 グループ会社に2年間の出向となった。
会計検査では、何も知らない後任の部課長らが曖昧な答えに終始したという話も漏れ聞こえてきたが、このまま会計検査院も舐められたまま終わりにするとは思えない。
中日本経営陣は今回の件について、自身のわずかな減給と 関係者の降格人事、そして 再発防止策の発表により、全てを終わらせるつもりの様だ。
「嘘や隠蔽がまかり通り、最後は社員を犠牲にする素晴らしい企業」と 皮肉る声が聞こえて来た。
ー 続 く ー
NEXCOと大島産業(45)■ 今後の処分と複雑な資金の流れ
まず大島には、建設業の監督官庁である福岡県が法令に基づき何らかの処分を下すと思われるが、提出書類の虚偽記載など常習的に行っていたようだが、せいぜい指名停止数ヵ月程度で、建設業許可の取り消しとまではいかないだろう。
しかし、会社法や税法上の疑義は残る。
今回関わりのある数社についても同様だ。
今回の工事で、施工体系上は一次下請として ㈱ダイコウという会社から 二次下請の業者に支払いが行われる流れになっているが、実際は 大島と同住所の㈲エイチ・ワイ・ディから塚本不動産㈱(塚本總業㈱)、塚本から A社、そして その下の業者に支払われる流れになっていたという。
エイチ・ワイ・ディと塚本は、実際の施工に技術者を派遣していないペーパーだけの関わりだった様だ。
今回、大島、エイチ・ワイ・ディ、塚本不動産の工事経歴書を見比べてみた。
塚本不動産の令和2年3月期の工事経歴では、本件工事をエイチ・ワイ・ディから 5億0864万2000円で下請をしたことになっているが、なぜか同時期のエイチ・ワイ・ディの工事経歴に本件工事は記載されていない。
また、令和2年3月末時点で、中日本が 中央自動車道の工事で 大島に支払った金額は、最大でも4億5000万円程度(前渡金+一部しゅん工費)と考えられる。
塚本不動産が、中日本から大島に渡った額を超えて、5億円の売上を立てているのは不自然だ。
更に、下請が実際に契約し 支払いを受けていたのは塚本不動産ではなく、 塚本總業という証言もある。
詳細は闇の中だが、実際のお金の流れを複雑不透明にしているところから、資金洗浄を疑う声も出ている。
― 続く ―
NEXCOと大島産業(44)■ 7億円増額直後の大どんでん返し
契約変更の協議が大詰めとなる9月30日、大島から中日本の事務所の担当課長に、交通保安要員の新単価処理を要望する電話が入り、「下請業者からの見積りで支払うことを支社長と約束している」との発言がある。
しかし、同課長と八王子支社の関係課による打ち合わせで、新単価は認めない旨が確認された。
ところがその直後、八王子支社の担当課長から事務所の副所長に「部長の意向により新単価で見てほしい。支社が責任を持つ。」という電話があり、支社担当部長、構造技術課長、事務所長、副所長の打ち合わせで、支社の指示に従うことになった。
10月12日、設計変更に疑問を感じた 支社の他部門の社員から、支社長に対し疑義がある旨進言がなされたが検討されなかったという。
まともな社員を 上司が抑えこんだということだろう。
その後、交通保安要員を含む全ての単価について大島との間で合意し、10月23日に 13億2910万1664円(+7億2667万7664円)で契約が変更された。
大島としては、16億円には届かなかったが 7億円の増額に成功して、美酒に酔いしれたと思われる。
しかし、想定外の大どんでん返しが起こる。
実は、9月24日に 緑橋の橋台部に ひび割れが見つかっていた。
その後、下請業者から鉄筋不足の疑いがあるとの告発があり、中日本は騒然となった。
10月26日に 中日本は大島にひび割れの調査を指示、28日に中日本が緑橋の橋台を検査したところ、鉄筋が入っていないことが確認され、全ての関係者の背筋が凍り付いたことだろう。
更に文春が「『鉄筋不足で崩落の恐れ』中央自動車道の手抜き工事を下請け会社が実名告発」と報じ、大島の名前が全国に知れ渡ることになった。
その後、中日本は大島との 同耐震補強工事契約を11月20日に解除するに至った。
以上が 報告書や取材を通じて分かった、施工不良判明までの流れである。
今回の施工不良は、大島の技術不足、経験不足に 無理な低入札による契約など、大島そのものに主因があるのは勿論だが、民間同士の工事に、国会議員と国交省の介入があったことが大きい。
それを機に、中日本上層部が政治忖度をしたことにより、大島に中日本の事務所が翻弄され、現場に目が届かなくなったことで 起こってしまった。
また、内規に違反して認められた7億円の増額は、国会議員による圧力がきっかけとなり、それに応じた経営幹部、忖度した支社長他、関係部課長らが関係していることははっきりしている。
報告書の中には、法令違反が疑われるケースが幾つも見られることから、このまま終わるということにはならないだろう。
ー 続 く ー
NEXCOと大島産業(43)■ 肝煎り人事のミッション
2020年7月の人事異動では、八王子支社の部長、構造技術課長、事務所長に 議員会館に行って説明をした者や増田副社長の側近が配置され、副社長との連絡係(本社保全企画部長)に 同じく議員会館に説明に行った者が就いた。
この肝煎り人事のミッションは、大島との最後の精算をスムーズに行うことである。
コンプライアンスの厳しい(はずの)会社にあって、どの社員も好んだ役回りではなかったと思われるが、結果的にミッションをやり遂げており、相応の責任はあると言えよう。
8月6日、大島から事務所の担当課長に電話があり、当初契約額 6億円にプラス10億円、最終金額は 約16億円という希望が伝えられる。
同課長は八王子支社の関係課の打ち合わせで、中日本の基準で積算して せいぜい 約8.1億円(+2.1億円)、大島の見積りを最大限考慮しても 約11.5億円(+5.1億円)という試算を共有している。
8月21日には、八王子支社部長から工期を2カ月程度延長し、設計変更の準備を進める旨の説明がなされ、支社長からは 「丁寧な対応を心掛けること、書類作成には無理な注文をしないこと、60日間の工期延長で打ち合わせること、資料を修正すること」等、大島寄りの指示があった。
変更金額については、大島から16億円という伝達があったが、積算では約12億円で大島が求める額に達しない旨が報告されている。
内部では 「12億円でも多いのに 16億円は調子に乗り過ぎ」という思いはあった様だ。
ー 続 く ー
NEXCOと大島産業(42)■ 議員に恥をかかせるな、払ってやれ
2020年3月、大島には追い風が吹き まさに絶好調、契約金額の増額と一部しゅん工が実現することになる。
その経緯はこうだ。
2019年10月以降、中日本はじめ、NEXCO東日本、西日本、国交省、福岡県、政治家のところに告発文が数回にわたり届けられる。
告発文 → こちらをClick
送り主は不明だが大島の下請業者で、虚偽の施工体系の違法性、代金の未払い、下請虐めの実態を訴えるものだった。
2020年1月、福岡県が実態の調査を行いヒアリングをした際、未払いの理由を問われた大島は「中日本が支払ってくれないから」と事実に反する回答をしている。
中日本では複数年契約の工事では部分払いをすることが約束されているが、工事の進捗が上がらなかったため、大島自身が 可能な部分払い請求を辞退して申請しなかったというのが実際のところだ。
結局、大島の事実に反する回答がそのまま中日本幹部に伝わり、増田副社長が「議員に恥をかかせるな。払ってやれ。」と述べたという。
その発言で中日本の社内の空気は一変し、ガバナンスが効かなくなった。
八王子支社構造技術課の主導で、3月6日には契約変更で金額を 7億3675万0159円(+1億3432万6159円増額)、工期を 2020年7月10日まで延長(+121日)することに、更に、大島の求めに応じ一部しゅん工検査(2億6391万8711円分)を実施、中日本内部では未提出の書類が多いことから抵抗があったが、最終的に大島の言い値に添う形で新単価が決定され、承認することとなった。
まさに、この点は 中日本が犯した背任行為で、真相究明が必要な一つのポイントと言える。
そして7月の人事異動で、増田副社長に近い者が 八王子支社に送り込まれてきた。
ー 続 く ー
NEXCOと大島産業(41)■ 起こるべくして起こった施工不良
国会議員を使ったパワハラ騒動の後、標識工事の現場代理人としてK氏が就くことになり、大島としては目的を達成したと言える。
一方で、下請業者からは工事費の不払い等で大島への不満が大きくなり、もう限界にきていた。
実質的な一次下請 A社が9月で撤退を表明、施工に携わっていた下請27社のうち14社が 2019年12月までにいなくなり、現場作業員がいない空白期間があるという前代未聞の事態となる。
業者からの告発で、中日本の事務所は 「施工体制の偽装」や「下請への不払い」の事実を掴んでおり、大島との契約解除も考えたが、既に国会議員の登場で政治案件化していたため出来なかった。
今回問題となっている鉄筋不足、鉄筋切断の工事が施されたのはこの直後だ。
大島からの度重なる中日本の担当者へのクレーム、威圧的な態度に、両者の関係は悪化して、中日本は立会検査の人間も一定せず、大島の施工に目が行き届かなくなっていた。
下請業者に逃げ出された大島が、「金は払う、とにかく何人でもいい」と躍起になって代わりの下請業者を見つけ出したのが 12月、施工体系図を更新(相変わらず虚偽の書類)して提出するも、集められた労働者は専門性を要する耐震工事に精通していなかった。
鉄筋不足が判明した緑橋の橋台においては、鉄筋組立・鉄筋検査が工程表に記載されておらず、鉄筋がないまま 2020年1月にコンクリートを打設している。
下請の話では、現場に立ち会った大島側の担当社員は 図面が分からない素人で、言われるがままに立っていただけという。
実質は大島の監理技術者が工程管理をしていたが、電話による作業管理で 最後の鉄筋配置が必要なことに気づかず、次の工程を指示したようだ。
この点について、大島は 下請が勝手にやったと反論している。
また、絵堂橋の施工では、2月に行われた鉄筋の組み立て時に、鉄筋どうしが干渉したため故意に切断しているが、工期に間に合わせることを優先した大島の現場代理人が指示したとの証言が得られている。
耐震補強工事において、鉄筋を故意に切断するという 常識では考えられない工事が行われていたのだ。
こうした中でも、なぜかしら大島に「追い風」が吹いてきたのである。
ー 続 く ー
NEXCOと大島産業(40)■ 国会議員を使ったパワハラ騒動
大島産業は、辞めた現場代理人F氏の穴埋めに K氏を復活させようと考えたが、K氏が2月の改善措置請求の対象となった当事者だったため、中日本の事務所が了承しない事は予見できた。
下請業者が大島の社員から聞いた話によると、ロッキング橋脚の耐震補強工事に応札するにあたり、建設族の地元国会議員に儲かるかどうか相談し、2018年に西日本と中日本の工事を各1件ずつ受注したという。
そこで 大島は、再度 国会議員の力を借りて、中日本に優位に立てる術を思い付いたようだ。
まず、日頃進捗を督促してくる中日本の施工管理員のメールの言葉の過ぎた部分を切り取りパワハラに該当するとして騒ぎにする。
それを収める交換条件が、K氏を現場代理人に復帰させ、今後の精算交渉を有利にすることである。
報告書では「施工管理員のメールの文面の中に、現場代理人を揶揄し個人攻撃ともとられかねない不適切な文言が確認された」と指摘されており、大島に攻撃材料を与えてしまったのは事実だろう。
最終的に、施工管理員は交代することになったが、その経過は次の通りである。
以上だが、国会議員が干渉してきたことで、事実確認が十分になされないまま政治案件化することを避けるため、支社長が施工管理員を交代させるよう指示している。
更に、担当課長のメモでは、国会議員が 「適正利潤」や「設計変更」についても言及しており、コンプライアンス違反が疑われる内容だ。
下図は報告書にあった「受注者側の配置技術者数と施工箇所数」というグラフだ。
2019年8月から9月にかけて 技術者数が少なくなっているが、まさにこの時期、パワハラ騒動が起こっている。
この国会議員・国交省課⻑との面会を機に、中日本の社内で「大島は政治案件、国交省から迂回天下りした副社長もコミットしている」という認識が共有された。
一方で大島は中日本の事務所に対し 要求を強くしていった。
ー 続 く ー
NEXCOと大島産業(39)■ 施工能力不足を露呈
低入札価格調査をパスした大島産業、2018年8月28日に契約したまでは良かったが、下請業者が決まらない等の理由で3ヶ月間も着工が遅れ、12月になって ようやく施工体系図及び施工体制台帳を中日本に提出した。
しかし、届け出た1次下請業者「㈱ダイコウ」とは異なる別の下請業者A社と、前述の塚本不動産のグループ会社「塚本總業㈱」との材工一体の契約を締結させており、虚偽の申告をしている(下図)。
契約締結後3ヶ月近くも着工しないというのは聞いたことがない。
通常は業者が作成するべき 施工計画書や交通規制の書類を、なぜか発注者の中日本が手伝いようやく工事開始にこぎつけたという話が、当時の業者の間で話題になっていたという。
2019年1月、工事は始まったが、その後も中日本の事務所からの再三の指導にもかかわらず、書類の未提出、立会検査の未実施、工程の遅延、工事の進捗改善が図れず、現場管理の杜撰さが改善されなかった。
そのため、中日本の事務所は危機感を覚え 同年2月に大島本社に会社としての改善措置要求を出し、工程挽回を要望した。
しかし、大島の現場を任されていた現場代理人K氏が、しっかりとした修正工程や是正計画を十分書けなかったため、結局は中日本の事務所が書類作成を手伝い提出したという。
本来であれば、この時点で契約解除でもよかったが、中日本も国交省が決めた工期に追われていたことから そうした判断には至らなかった様だ。
さすがに大島は、工期の大幅な遅れの責任者としてのK氏を交代させることを申し出ている。
その頃から大島は、下請業者に対する支払いの手続き等も上手くいってなかった様で、トラブルが起こり始めていた。
そもそも 支払いトラブルの原因は低入札の契約による手持ち資金の薄さにあったが、偶然にも現場近くで 別の標識工事(約4億円)の話が舞い込んできた。
運よく6月3日付で 随意契約を結んだところまではよかったが、問題が起こる。
同工事の現場代理人に指名したF氏が、工事の着手進捗を求める中日本と、叱責する大島本社幹部との間で板挟みとなり、間もなく連絡がつかなくなり 辞めてしまったのだ。
大島は後任を探さなければいけなかったが、社内に現場代理人の資格者は余っていない。
その後 起こったのが、大島による 国会議員を使ったパワハラ騒動である。
ー 続 く ー
NEXCOと大島産業(38) ■ 第三者委員会の最終報告書
7月27日、中央道を跨ぐ橋梁の耐震補強工事施工不良に関する調査委員会の最終報告書が公表されたが、参考資料も含めると200ページを超え 読み込むのに時間を要した。
報告書は冒頭で「調査の限界」と題し、同委員会の調査で「収集した資料等のほかに、本件事案の事実関係を認定するうえで重要となり得る資料等が存在する可能性があること」「ヒアリングで得られた情報の中に事実と異なる情報が含まれている可能性も否定できない」ことを指摘、「後日そのような事実が判明した場合は、事実認定および検証結果が変更される可能性がある」と断りを入れている。
報告書等では、
1.施工不良が起こった原因
2.国会議員や幹部の発言の影響
3.内規に反した工事金額の増額
等が明らかにされた。
施工能力が不足していた大島が契約解除もされず工事を続け、最終的に6億円の当初契約が なぜ13億円に増額変更されたのか、報告書と取材内容を織り交ぜながら 紐解いていきたい。
今回施工不良が明らかになった耐震補強工事は、大島が2018年7月の入札に参加し、低入札の重点調査基準を下回る 6億0242万4000 円(税込)(落札率 73.8%)で落札したため、中日本は低入札価格調査を行っている。
一般的な 通りいっぺんの調査では、巧妙に脚色された提出書類から、その後起こる施工不良や不払い問題、施工体制違反等の建築業法違反を予見出来なかったようだ。
大島は調査をパスし、契約するに至ったが、調査で届け出た一次下請3業者「B社(大阪市)」、「M社(宮若市)」、「塚本不動産㈱(東京都中央区)」とは 契約を結ばず、当初から不可解な動きを取っている。
協力した下請3社も 大島とは相当な結びつきがあると思われる。
ー 続 く ー
NEXCOと大島産業(37)■ 最終報告書に盛り込まれるべきこと
7月6日に開催された第9回第三者調査委員会の議事録には、「再発防止の為に 他機関の好事例があれば参考にすべき」とあった。
今回の不祥事が、「議員に恥をかかせるな、払ってやれ」から始まったことは、社内の共通認識という。
現状そうだとしても、再発防止の為にはそれを許さない組織改革が必要だ。
今回の失敗の本質は、経営権と人事権を持つ本社幹部がコンプライアンス責任者を兼務している昭和的な組織体制にある。
一般的に まともな大手企業では、大手弁護士事務所の役員等が「社外取締役」としてコンプライアンス担当の役員に就き、告発者の保護、公正な調査、企業倫理の醸成に資している。
中日本に限らず、高速道路会社には国土交通省の天下り官僚が経営権のある取締役として就いているのが現状だ。
天下りの取締役は、円滑な高速道路行政の為には ある意味役に立つ反面、今回のような醜聞や品質安全、企業倫理に関わってくるデメリットの方が多い。
問題が起こった時に身動きできず、決定を覆すことが困難な状況になり、社員を巻き込んでしまう。
同じ失敗を繰り返さないためには、社外役員がコンプライアンス窓口の責任者に就き、告発者が法的に保護される体制づくりが急務と言える。
このことが、第三者調査委員会の最終報告に盛り込まれる最優先事項と言える。
本題に戻るが、この後 中日本自らが公正公平な工事費を算出し、大島と協議もしくは審査会に付託し、適正な工事費の支払いをして、決着をつけることが 国民の財産を守る事につながる。
弊社の記事は、中日本の社員はもとより、西日本や東日本、国会議員、国交省の担当課の方にも目を通して頂いており、各方面から激励の言葉も頂いている。
本来あるべき方向に軌道修正するために、今は第三者調査委員会や会計検査院の力を借りているところだが、本来 中日本自身が自力で変えていくものである。
中日本が自発的に変われるか、周囲は注目している。
ー 続 く ー
NEXCOと大島産業(36)■ 政治案件の処理で決まった人事
5名の精鋭調査官で臨んだ追加の会計検査の行方に、NEXCO中日本の内部の両陣営はもとより、国会議員も注視している。
今回は中日本の業務について検査をしたわけだが、税金の無駄遣いの発端となったのは 「政治家への忖度」で、企業倫理の問題である。
中日本ではコンプライアンス教育が行われており、コンプライアンス相談窓口もある。
なぜ 7名の決裁権者が 水増し請求を知りながら 窓口に駆け込めなかったのか。
その原因は、人事権を持つ役員がコンプライアンスの責任者という中日本の組織体制にあることに尽きるだろう。
また、7名のうち 3名(支社部長、同課長、所長)は、八王子支社に配属される前は、本社で「パワハラ呼び付け騒動(※1)」、「不払い告発文(※2)」に携わっていたことが判っている。
※1 大島産業の社員が中日本の工事担当者からパワハラを受けたと宮内秀樹議員に訴え、国交省道路局の担当者と中日本本社の社員らを衆議院議員会館に呼び出した件
※2 大島産業が建設業法に違反し、届け出た施工体系図とは違う 裏契約を 大島が指定する別の商社と契約させ、かつ不払いを続けた実態を告発した文で、NEXCO3社と国交省、国会議員らに送付されいる
その3人がわざわざ 大島が工事を行っている支社に決裁権者として配属されてきた。いずれも 大島の工事を「政治案件」と認識した 中日本の幹部が、(政治的に)処理を誤らないよう配置した人事ということが窺える。
配属された者たちも被害者だ。
自身も含め コンプライアンス教育を受けた多くの社員の目がある。
それでも、幹部の意向に沿った方向で進めなければ 自分の立場が危うくなる。
社員たちもコンプライアンス違反が行われようとしている瞬間を見ている。
だが、上司に言っても 本社の意向だからと諦めている。
告発したとしても 間違いなく潰されるし、一人で抵抗しても無駄だから 最後は見て見ぬふりをする。
ー 続 く ー
NEXCOと大島産業(35)■ 間詰め材の充填は十分か?
NEXCO中日本における 大島産業の工事の現場検査について、前回 橋台の補修箇所の水漏れについて指摘した NEXCO西日本の関係者から ある懸念が寄せられた。
NEXCOと大島産業(23)■ 中日本が問題なしとした国立橋
NEXCOと大島産業(24)■ 今後もひび割れが広がる可能性
「橋と橋台との間のコンクリートがスカスカか、間を埋める『間詰め材』の充填が不足して隙間が空いている可能性があります。
作ったばかりの何も無い場所から水が垂れてきているのは変です。
ロッキング橋脚対策マニュアルでは、舗装までびっしりセメント系の間詰め材で埋めることになっています。
西日本ではそうするよう指導しています。
この部分に隙間があると、水が侵入して溜まり 微細な隙間から伝わって、橋と橋台とを繋いだ重要な鉄筋が腐食したりすることで、大きな地震が起きた場合に、耐震補強工事の効果が全く得られないことになりかねません。
まさか 間詰め材を全く入れていないとは思いませんが、何らかの空洞か水道があるのではないでしようか?
国民の生命を守るために税金を投入したのであれば、調査して もし入っていなければ、マニュアル通り隙間を入念に埋めるべきです。」
果たして、昨日現地を見た検査官が気づいたかどうか。
通常であれば、見えないところほど 施工記録を残しておくはずだが、前述のように 大島案件では書類の不備が多い。
検査官におかれては、耐久性に関わる重要な部分をしっかり調べて確認して欲しいものだ。
ー 続 く ー
NEXCOと大島産業(34)■ 建設工事紛争審査会
公共工事中止における最近の和解例に、平成30年に市長が交替し新庁舎建設(総工費約87億円)の契約を解除した近江八幡市と ㈱奥村組(大阪市)の争いがある。
県建設工事紛争審査会の勧告に基づき、今年1月、市は奥村組に4億0600万円を支払うことで和解合意したと発表した。
これは甲乙の責の立場は逆だが、NEXCOの契約書にも「建設工事紛争審査会」への付託についての記載がある。
令和2年10月23日の5回目の契約金額の変更の際、当初大島産業は10億円の増額を要求、あまりの無茶ぶりに本社工務部門も含め社内では反発し、審査会に仲裁に入ってもらうつもりだったという。
ところが、天の声が聞こえたのか 途中から方針が転換、本社の指示だから仕方がないということで支社の決裁権者も同調し、最終的に6億円までは増額を認めたのが真実の様だ。
(決裁権者の中には よくわきまえた者もいれば、「赤木さん」のように抵抗した方もおられるらしい。)
6億円を認めてしまった以上、中日本には支払うつもりはあったが、蓋を開けてみると品質証明や立会検査等 出来高を裏付ける書類がない、あるのは 警備費や型枠工事の材料費など 根拠不明の書類のみ。
今後、最終的な精算に関し、大島との間に主張の相違が生じることが予想され、当然審査会に付託されるだろう。
中日本は「違約金+補修費」を請求することになるが、「出来高部分」をどう算定するかで 中日本のコンプライアンスの姿勢が問われている。
前述のように、辻褄合わせのために中日本は、貴重な労力と時間を使い 大島に代わって「出来高部分」を確定させるための書類を作成してやった。
そのプレゼントは、国民の税金が原資ということを忘れてはならない。
ー 続 く ー
NEXCOと大島産業(33)■ 触れてほしくないこと
入手したNEXCO3社の標準的な契約書から、大島産業の耐震偽装発覚後、中日本が本来どう対応すべきだったかが見えてくる。
契約上、受注者が契約に違反し 目的を達することができないと認められるときは、発注者は契約解除ができるとされているが、その後問題となる支払い関係について、「発注者は 請負代金の 10分の3の違約金を請求できる」、「工事完了した出来高部分については受注者から引き渡しを受け 相応の請負代金を支払わなければならない」、「必要がある場合は最小限度の破壊検査をできる」等細かい規定がある。
今回の場合、違約金については当初の請負代金 約6億の3割で、1億8000万円が請求されると思われる。
問題は出来高部分だ。
この半年間、中日本は大島が完了した出来高部分について調べていたが、必要な品質証明や立会検査が無いのが殆どということが判っている。
通常の工事では 多額の費用をかけ管理することで 支払いに至るのだが、今回の大島の工事に関しては、何故か 中日本が調査を尽くし 肩代わりしたのである。
工事の補修や品質の裏付け調査は 中日本の将来の管理のために必要だが、わざわざ支払い対象とすべき出来形確定のために行ったという。
この根本が間違っていることに、検査官が気がつかないはずはない。
ー 続 く ー
NEXCOと大島産業(32)■ 国立橋の施工は支払いに値するか
大島産業が施工し 契約解除となった2工事についての追加会計検査、2日目は現場検査の予定である。
NEXCOをよく知る関係者は次のように述べた。
「耐震補強工事を行なった跨道橋の多くは交通量の多い高速道路からしか近づく事が出来ません。
検査する場合、中日本は 路肩規制を警察に緊急申請する必要があります。
申請しなければ、パトロール車で素通りするしかなく、 『はとバス』状態です。
雨の予報ですし、中日本は安全確保も持ち出し 十分な検査はできないと思いますので、中日本の作戦勝ちでしょうね。」
だが、弊社が報じた 国立橋については、国道と交差しており 歩道から粗雑施工の補修箇所が見られる場所である。
中日本は今後、粗雑構造物を 長期に亘り管理していく事になる。
補修はしているが、他の優良工事で作られたものとは違い、早く劣化しコストがかかるお荷物だ。
福岡県民新聞「中日本が問題なしとした国立橋」
検査官におかれては、その施工が支払いに値するものか 第三者の目で判断して頂きたい。
ー 続 く ー
NEXCOと大島産業(31)■ 会計検査、本日から3日間
7月5日、本日から3日間、NEXCO中日本において 大島産業が施工して契約解除となった 2つの工事に対しての 追加会計検査が始まる。
会計検査院の検査官が 5名、3日間張り付くというのも異例というが、それだけ闇が深いという事だ。
幾つもの決済をくぐり抜け、支払いが決まった13億2千万円という工事の最終変更金額について、実態の裏付の無い警備費、埋設型枠の材料の加工賃、特殊工法の諸経費のダブル計上等、大島側の水増し請求に対する疑念は何一つ払拭されていない。
被害を被った複数の業者は中日本の調査に事実を伝えたというが、検査官にはどのような回答をするのだろうか。
昨年10月まで 度重なる下請業者からの告発があり、通常なら はるか昔に契約解除となっているはずが、政治案件工事として 本社からの指示により放置されたことが、工事費の異常な増額と耐震偽装施行に繋がった。
その経緯を事細かに知っている7名のうち6名は左遷人事で検査会場にはいないが、唯一人 異動を免れた担当者がいる。
会計検査=国の税金、国民の財産に関わる問題であるが、担当者がどっちを向いて証言をするのか 社内でも注目されている様だ。
ー 続 く ー
NEXCOと大島産業(30) ■ 舐められた会計検査院
ある意味分かりやすい、会計検査前のあからさまな人事異動、そこまでしても隠したい不都合な事実があるということの証と言ってよいだろう。
これまで会計検査院で公表されている多くの不正工事の事例では、何故間違ったのか、どこが無駄なのかが詳細に説明されているが、中日本は耐震偽装工事が起こった経緯について、真摯に、そして正直に話す意思は無いということになる。
会計検査院は「内閣から独立して存在する国家機関」であるが、中日本の受検姿勢を見る限り、国の調査に誠実に回答することを拒絶するという愚かな意思表示にしか思えない。
会計検査院も舐められたものである。
中日本は耐震偽装判明後に行った補修記録と形式的な予防対策のみを報告して、早期に幕引きを図るつもりかもしれないが、大島を契約解除した後の構造物の扱い、中日本の補修費の扱い、損害賠償費の支払についての扱いは一切決まっていない。
内規に拠らない不正精算、国の資産としての粗雑構造物をどうするのか、明確な回答を得ない限り、会計検査を終えることはないはずだ。
中日本の冷酷な人事は、社内のみならず東日本や西日本の社員も知るところとなっているという。
NEXCOの社員たちが 会計検査院の独立を信じ 検査の行方を注目している。
ー 続 く ー
NEXCOと大島産業(29) ■ 会計検査直前に人事異動
7月の早い段階で会計検査が行われるという情報が入った。
会計検査院は、大島産業の耐震偽装が発覚した直後、NEXCO中日本八王子支社の検査を行った様だが、当時は内部でも真相が不明な点が多かった。
会計検査は通常は年度を跨がないと言われているが、第三者調査委員会の調査結果の進行具合を見ながら追加検査の時期を見計らっていたと思われる。
しかし、調査が予想以上に時間を要していることから、会計検査院の堪忍袋の緒が切れたといったところか。
今回、会計検査院がターゲットにしている項目のうち、大島になぜ7億円もの大幅増額が認められたのか、その経緯や指示系統が最大のポイントと思われる。
前述のように、国会でも取り上げられたが、材料費や警備費の水増しが疑われている問題に中日本は未だ回答しておらず先延ばしにしたままだ。
その真相は、増額の契約書の決裁をした7名に直接聞けば判る。
簡単なことだ。
しかし、そのうち6名が会計検査の直前に異動となり、会計検査は 新しく赴任したばかりの6名の後任者が受検することになる。
本当に何も知らない者たちは、「知らない。分からない」と 事実だけを話すことになり、ある意味、正直に受検することになるだろう。
中日本に 誠実に検査に協力する気持ちがあるのなら、会計検査が全て終わってから人事を行うのが、公共事業を担う企業の本来あるべき姿ではなかろうか。
ー 続 く ー
NEXCOと大島産業(28) ■ 衝撃の左遷人事
6月中旬、NEXCO中日本において、令和3年7月1日付の定期人事異動が発表され、大島産業が行った耐震工事で、契約書の決裁権者の殆どが異動になることが判った。
当初6億円の契約が最終的に13億円に増額、その内訳の中に不正が疑われるものも含まれており、国会でも質問されていたが未だ正式な回答はされていない。
しかも、第三者調査委員会が終了していない中でのこの人事は 何を意味するのだろうか。
前の記事「契約変更に何重ものチェック(2021年6月19日)」で書いた通り、決裁権者は7名だった。
八王子支社長は、本社に異動予定だったが 6月24日付で退職していた。
八王子支社の高速道路事業部長と構造技術課長、保全・サービスセンター所長の3人はグループ会社に出向、同副所長と担当課長は別の支社に降格左遷となっている。
決裁権者7名のうち6名が異動(うち1名は既に退職)というのは衝撃だ。
中日本では人事異動を行う場合、発表の1ヵ月程前には希望の聞き取りがあったり、内示が出されることが通例であるが、今回は発表前日に急遽決定したという。
実は、その直前に会計検査院の検査が行われる日程が通知された様で、そのことが 人事に関係しているのではと 噂になっている。
ー 続 く ー
NEXCOと大島産業(27) ■ 上層部の関与で機能不全に?
大島産業は、低入札価格による落札後の審査で、「本件工事で 下請けに不払いや粗雑工事をしない」という誓約書をNEXCO中日本に提出している。
それにも拘らず、工事期間中に数回、下請け業者と思われる差出人から、福岡県やNEXCO3社、国交省、政治家宛に 不払いや施工体制の偽装を告発され、工期も大幅に遅延していた。
なぜ中日本は この段階で工事を打ち切り、契約を解除できなかったのだろうか。
仮にそうしていたら、中日本自体の信頼性を貶めることになる この騒動は起きなかったはずだ。
「今回 社内の幾つものチェック機能が働かなかったことで、歴史に汚点を残す耐震偽装工事を引き起こしましたが、NEXCO中日本の上層部の関与、便宜指示により組織全体が機能不全になったことが原因ではないでしょうか。」
前出の関係者はこう指摘する。
第三者調査委員会というが、実質的に聞き取りを行っているのは社内の人間、その聞き取った資料を基に、外部の有識者が判断する仕組みとなっている。
社内の人間が調査するのだから 当然忖度が働き、真の第三者調査委員会と言えるかというと 疑問だ。
その聞き取り調査でも、職員らの主張に食い違いが見られる案件が多過ぎて、真相解明に時間が掛かっているのが現状だが、こうした委員会の仕組みでは 核心に迫るのは難しいと見られる。
現在、中日本と取引がある大手施工業者の間では、前代未聞の不正業者の特別扱いに「あまりに不公平」という声が上がっている。
第三者調査委員会の最終報告を含め、中日本の後始末の行方を 数多くのNEXCOの工事請負企業も注目しているのだ。
ー 続 く ー
NEXCOと大島産業(26) ■ 契約変更に何重ものチェック
さらに続けて
「また、契約金額が 50%を超える変更となれば、出先機関の上部に位置する支社担当部門も含めた何重もの厳しいチェックが必ずあります。
つまり末端の 工事事務所の一課長の一存で、工事費を2倍になどできません。
13億円に変更する契約が確定したとなれば、①保全サービスセンターの課長、②同副所長、③同所長、その後に 支社の ③担当課の担当者、④担当課の担当者、⑤課長、⑥部長、⑦支社長の決裁が済んでいるはずです。」
と話してくれた。
つまり、現在 水増し請求の疑いがある異常な変更金額について、少なくとも支社までは同意していたのである。
この7名全てが 気が付かなったというのは 有り得ないのだ。
加えて、NEXCO3社においては、工事体制や金額など全般について要領を管理する工務部門が 絶対の権限を持っていると言われており、黙認していたと思われる。
これが真実なら、NEXCO中日本は組織ぐるみ、政治案件ということで上層部に忖度し、チェック機能が働かない組織体質になっているということが言える。
ー 続 く ー
NEXCOと大島産業(25) ■ 政治案件工事の金額変更
発覚した耐震偽装問題を調査する第三者調査委員会で、2月18日に開催された第4回の議事概要に、「変更契約に関して、増額の根拠に不明確な点があることなどが判明しており、変更契約金額の妥当性に疑義が生じていることから、工期延長の理由と合わせ、更なる調査・検証が必要である」と記載されている。
つまり、当初契約額6億円から 最終変更金額13億円になった経緯について明らかにするということだ。
工事費が水増しされた疑いがあることについては弊社記事でも指摘してきたが、7億円も増額される過程で、NEXCO内部にチェックが働く仕組みがあったかどうかという点が疑問である。
その点について、NEXCOの内情をよく知る関係者に尋ねてみた。
「この契約変更の途中には、大島産業がNEXCO担当職員からパワハラを受けたとして告発がありました。
地元国会議員を使って国交省経由でNEXCOに抗議があり、担当を外す形でNEXCOは謝罪しています。
この工事自体が政治案件ということで、NEXCO本社は認識していますので、工事の精算状況を経営陣が知らずに現場任せにしていたはずはありません。」
つまり、経営陣は 政治案件の工事だったため、契約金額の大幅変更について承知していたというのである。
ー 続 く ー
NEXCOと大島産業(24) ■ 今後もひび割れが広がる可能性
専門家の指摘はまだ続く。
最悪なことに、その場所がグランドアンカー台座という耐震構造で重要箇所の付近であるため、将来の損傷劣化により機能障害が懸念されるとのことである。
そして、専門家が何より驚いたのが横方向のひび割れだ。
この道30年のベテランだが テキストですら見たことがない症状で、単なる粗雑施工の結果とは考えにくいというのだ。
「NEXCO中日本が 本当に調査をしたのか疑問で、心ある技術者なら100人中100人が問題ないとは言わないレベル」とまで言い切った。
そして、補修箇所のひび割れ幅の程度と 工事完了時期から、ひび割れの進行が停止したかどうかを 中日本は十分確認し 補修していないのでは、と疑問を呈した。
補修したとしても、ひび割れが広がる可能性があり、今後長期的に劣化、耐久性に心配がある構造物の可能性が高いということだ。
国立橋の場合、国道の歩道から確認できたが、「緑橋」のように高速道路からしか行けない橋梁でも、同様の施工がされている可能性がある。
弊社記事「NEXCOと大島産業(21) ■ 早期幕引きを図る声 (2021年4月28日)」で書いたように、仮に天から早期幕引きを図る声が聞こえたとしても、中日本は踏み止まるべきだ。
拙速な判断、妥協、うやむやな精算処理を行った場合には、後々粗悪な品質から起こった事故、不具合の賠償責任、補償義務は中日本となることに留意しなければならない。
ー 続 く ー
NEXCOと大島産業(23)■ 中日本が問題なしとした国立橋
NEXCO中日本が昨年11月、大島産業との契約の解除を行い、耐震偽装箇所の「緑橋」「北原橋」「絵堂橋」において 中日本自身が再施工を行っているが、他の橋梁においても杜撰な工事を行っていた疑いが出てきた。
東京都国立市で中央自動車道が国道20号と交差する箇所にある「国立橋」、ここでも大島が耐震補強を行っている。
今 現地の橋台を確認すると、工事後1年も経たないのに、樹脂塗料にて幾筋もの補修後がある他、壁面から水が滲み出た白い筋が数箇所見られるのだ。
問題発覚後、中日本が調査報告を行った結果「品質的に問題無い」と発表した箇所である。
道路建設の専門家に 現況の写真を見せたところ、問題と思われる点を幾つか指摘してもらった。
まず、補修の跡が数多く見られ幅も広いことだ。
コンクリートの打ち重ねの箇所であろうか、白い横線の一部が剥がれ落ちており、後々剥がれ落ちが進行して、水分、酸素が侵入し内部の鉄筋の錆につながるという。
次に、壁の途中の白いシミと黒い筋が見られる。
壁の中に水の通り道があり、コンクリート中の成分を溶かして滲み出てきているもので、いずれコンクリートの中の鉄筋が錆びて膨張し、歩道に剥がれ落ちてくる危険性があるそうだ。
ー 続 く ー
NEXCOと大島産業(22) ■ 道路資産の取り扱い
NEXCO西日本の関係者から興味深い話を聞いた。
前述のように、大島産業の工事では、証明する検査手続きや書類の不備、数量が不正解、確認できていないものが多いが、資産の取り扱いの関係から 引き渡しが簡単ではないというのだ。
高速道路に係る道路資産は国に帰属しており、「独立行政法人 日本高速道路保有・債務返済機構」が保有し、NEXCO各社に貸し付けている。
同機構は NEXCOが高速道路の新設、改築、修繕又は災害復旧に要する費用に充てるために負担した債務の引き受けを担っている。
その際、対象となる道路資産に対し、証書類や道路資産原簿等を照合することで、引き受け額が適正ということを確認するという。
NEXCO中日本が現在、本来大島が負担すべき品質と寸法の適合調査に協力しているという話だが、その結果 全て証明ができて書類が全部整えば 引き渡しに問題はなくなる。
しかし、証明できなかった場合や、規定の方法での確認ができず 別の簡易な方法で規定品質に類似判断ができたという場合はどうするのだろう。
当然のことながら、国への引き渡しはできず、品質不明、もしくは規定に不適合なものが、多くの一般通行車両が通る場所に放置されることになる。
また、跨道橋を管理する地方自治体にも引き渡しができない。
仮に放置扱いされた場合、資産としてどう取り扱うのか 悩ましい問題である。
書類の不備は、工事代金の確定に止まらず、国の資産にまで関係してくるということだ。
まずは 適正な価格である事、品質、耐久性を確認した根拠を明らにする必要がある。
国や自治体に引き渡す資産に、特定業者の優遇や不透明な処理、隠蔽は絶対にあってはならない。
NEXCOと大島産業(21) ■ 早期幕引きを図る声
NEXCO中日本から大島産業への請求金額は、契約解除による違約金と「緑橋」「北原橋」「絵堂橋」3橋の再施工費の合計で 数億円に上るようだ。
それに加え、水増し請求で 未だに説明されていないものがある。
大島の工事では複数の下請より見積りの水増し請求強要の申告があり、中日本自身も(虚偽と申告された)見積りを元にした精算自体について報告で触れている。
→ NEXCOと大島産業 ⑨ ■単純作業で1000万円超の水増し
更に、国会の委員会の場で 4億円の保安費を含めた異常な工事変更額の妥当性について、昨年11月に野党からの質問されているが、5ヵ月過ぎても中日本と国交省は未だ何一つ回答していない。
→ NEXCOと大島産業 ⑩ ■6億の工事に4億の保安費
以上の合計が 中日本から大島に請求されるはずだ。
当然、大島も損害賠償額の妥当性については主張を行い、争うことになるだろうし、中日本を訴えることも考えられる。
中日本としては、書類の未提出や不備があれば 支払う義務はなく、徹底的に争うべきである。
仮に天から早期幕引きを図る声が聞こえたとしても、拙速な判断、妥協、うやむやな精算処理を行った場合には、後々粗悪な品質から起こった事故、不具合の賠償責任、補償義務は中日本となることに留意しなければならない。
第三者調査委員会は 開催して約1ヵ月後に中間とりまとめを発表したが、その後3ヵ月過ぎても最終報告に至っておらず、調べれば調べるほど 疑問点が噴出し、終了の目途が立たない様だ。
この耐震偽装問題の解決は前途多難である。
- 続 く -
NEXCOと大島産業⑳ ■ 証明義務を肩代わり?
NEXCO中日本では、天の声に忖度した幹部主導で、大島問題の早期解決を図る動きが加速しているらしい。
工事契約では「品質証明」と「規格寸法適合」の2つの書類が揃って、初めて発注者は施工者に支払いをすることになるが、これは民間工事と公共工事、どんな小さな工事でも同じである。
通常、これら2つの書類での工作物の証明については施工者側が義務を負っており、書類の提出に基づき 発注者は検査を行い 公正に判断するという流れだ。
発注者は、工作物の寸法を申告させ、品質が証明できなければ 施工者負担で調査報告と撤去再施工を求めることができる。
大島産業の天神橋他の6橋の工事では、それらの書類や調書の多くが未提出や不備とのことだ。
また、中日本の立会検査が義務付けられている作業の無断施工も多く、大島自身が検査をしたという書類が数多く提出されているが、その殆どが不備または不適合という。
中日本が昨年11月に異例となる契約の解除を行い、耐震偽装箇所の「緑橋」「北原橋」「絵堂橋」において 中日本自身が再施工を行ったのは、大島の杜撰な管理体制の事績が積み上がり、再施工する能力がないと判断したからだろう。
ところが今、中日本では 書類の証明義務が大島にあるにも拘わらず、頼まれもしていないのに中日本自身が肩代わりして 書類を揃えたり、試験を行ったりしているという 信じがたい話が聞こえてきた。
これは、他の全施工業者には行わない特例扱いの措置で、中日本が大島にスムーズに出来るだけ支払えるよう手を貸すという不公正な便宜供与と言える。
事実であれば、公平・公正な業者対応が求められる公共工事でコンプライアンス上の問題となり、国会でも事実確認をする必要があるだろう。
- 続 く -
NEXCOと大島産業⑲ ■ 省庁で異なる対応
3月17日、全国紙が朝刊一面で LINEの個人情報保護に不備があったと報道、19日には総務省はじめ行政サービスなどにLINEを活用していた各地の自治体が、利用の一時停止を相次いで表明した。
LINEを運営するZホールディングスは 第三者調査委員会を設置し 23日には第1回、4月13日に第2回の会合を開催、結論はもう少し先になるようだ。
第三者調査委員会の結論を待たずして、総務省や自治体は利用を停止したが、当然の措置である。
このことと、国交省が大島に新規発注をしたことを同列に語るには異論があるかもしれないが、本質は同じではなかろうか。
国交省は、令和元年10月に下請虐めの告発文が出ていることを承知しており、昨年10月の文春報道で施工不良が発覚し中日本が契約を解除していることや、12月26日の第三者調査委員会の報告書で杜撰な管理体制と指摘されていること、1月22日に鉄筋切断後コンクリート打設して耐震偽装を行っていることなど、全て把握している。
それでも 3月10日、国交省九地整の入札に大島産業が参加し、約2億円の工事を落札している。
NEXCOを所管する 国交省道路局国道・技術課に尋ねたところ、「現在第三者調査委員会の中で原因究明が行なわれており、その結果報告を待って対応する予定だ。中日本からの報告内容について省内では情報共有はしておらず、各担当部署で手順を踏んで契約を行っている」という回答だった。
つまり、「様々な報告はされているが、(いつ終了するか分からない)第三者調査委員会の結論が出てから対応を検討、それまで国交省として新規契約は行う」というスタンスである。
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NEXCOと大島産業⑱ ■ 国交省が新規契約の不思議
今年3月10日、国交省九州地方整備局 北九州国道事務所の入札で、大島産業が福岡3号野間ランプ(下り線)改良工事を 1億9225万8000円(税込)で落札し、契約している。
折しもNEXCO中日本では、大島の施工不良が判明し契約解除後、箇所の再施工が行われている最中で、第三者調査委員会では施工不良の原因究明の調査が継続しており、国交省の新規契約を疑問視する声が 弊社に数多く届けられた。
民間企業が建設の施工業者を選定する際、例えば工事中に死亡事故が起こったとか、反社との関係があると報道された企業については 当然外すことになる。
仮に 検証する委員会が開催されていたとしても、その結果が出る前に契約するのは躊躇するだろう。
なぜなら、シロの場合もあるが、契約後にクロと出た場合に取り返しがつかないからだ。
地方自治体においても、こういったケースでは一般競争入札で当該企業が潜り込んで来ないように、何等かの防御策を講じるのが通例という。
当然、国交省も何らかの防御策を講じていると思われていたが、九地整で新規契約を行っていたことから、中日本が国交省に報告していないのではないかという疑問が浮かんだ。
結論から言うと、国交省は全て報告を受け把握していた。
中日本の第三者調査委員会には 国交省担当課長がオブザーバーとして参加しており、1月15日に発覚した鉄筋切断を含む耐震偽装についても、中日本が1月22日に 国交省に報告を行っていたことが判った。
それにも拘わらず、国交省が何もしないのはなぜだろう。
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NEXCOと大島産業⑰ ■ 耐震偽装は経営責任
鉄筋の不足と切断では意味合いが全く異なる。
切断は明らかに故意で 耐震補強工事の目的に反する行為、その後コンクリートを打設した偽装であり、中日本にとってみれば契約違反で刑事告発レベルだ。
笹子トンネル崩落事件の反省から、安全を最優先とした企業風土への改革と信頼回復に取り組んできたはずのNEXCO中日本だが、再び信頼を裏切るような耐震偽装工事を招いた事は取り組みの失敗であり、トップの経営責任と言えるだろう。
更に、その事実を経営者が再施工の終了後まで公表しないとしたのは、公共工事を担う企業としていかがなものか。
中日本は 1月15日に鉄筋の切断を確認したのだから、即座に公表すべきだったと思われるが、増田優一副社長の意向に沿って社内では事実上のかん口令を敷き、4月9日まで詳細を公表しないまま突貫工事を行っている。
週刊文春には、鉄筋切断等新たな施工不良の報告後、増田副社長らの発言の議事録の写真が掲載されていたが、中日本にそれは実在するか問い合わせたところ、「確認できません」と残念な答えが返ってきた。
社内で かん口令を敷いたことは分かったが、では監督官庁の国交省には報告を行ったのだろうか。
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NEXCOと大島産業⑯ ■ 中日本が認めた鉄筋切断
4月9日、NEXCO中日本は プレスリリースで、大島産業が施工した橋梁の耐震補強工事で判明した不良箇所について、再施工が完了し安全性が確保されたことを発表した。
プレスリリースはこちら
その中で、昨年11月13日時点で公表されていない、新たな施工不良箇所があったことを明らかにしているが、見過ごせないのが 絵堂橋(調布市)の橋台における主鉄筋の切断である。
今週発売の週刊文春では、中日本は今年1月15日に主鉄筋6本が切断されていたことを確認していたが、その後の社内会議において 増田優一副社長が、
「世間に対して余計な心配を惹起するような公表内容にしてはダメ」
「再施工の中でいろいろ見つかったが、それも安全な状態にして再施工完了しました、と言えばよい」
と発言したことを 議事録の写真付きで伝えている。
いやいや、増田副社長におかれて法令遵守担当役員、まさか そんな発言をしていたとは驚きだ。
この鉄筋切断と同社のコンプライアンスについては、弊社記事を参考にして頂きたい。
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NEXCOと大島産業⑮ ■工事を急いだ理由
次に、なぜ大島があってはならない主鉄筋の切断をしてまで工事を急いだのか。
鉄筋の不足、そして切断、耐震偽装までして何のメリットがあったのだろうか。
現場で技術的な課題が出た場合は、発注者であるNEXCOと協議をして 解決するために工期を延ばすことは可能で、最大の疑問だった。
そうしたところ、下請業者から一つ重大な証言を得た。
令和元年7月頃、大島の協力企業の社員で 福岡から中日本の現場に来ていた者が、「来年、大島の仕事で四国に行くことが決まっているが行きたくない」と不満を漏らしていたという。
東京と違い、長期に亘る四国の工事は割が合わないということらしい。
この話を聞いて、大島が工事を急いだ謎が解けた気がした。
調べてみると、その1年後の同2年7月に香川県、8月に徳島県で耐震補強工事が始まっている。
2つの四国の工事の一般競争入札は同元年11月に行われていたが、それぞれ2社、3社が応札、全社が予定価格を上回り、規程により不落札随意契約となっている。
その場合、NEXCOが応札した会社に見積依頼をして受注者を決定するという流れだが、いずれの工事も他社が辞退をしたため大島の受注が確定、12月からNEXCOと大島が価格協議に入り、夏までには工事が始まることが決まった。
その頃は、工程が大幅に遅れていて、工期の3月11日までは到底間に合わないことが分かっていて、現場では大声や怒声が飛び交っていたという。
そこに来て、夏から四国で2件の工事が始まることが決まり、どんなに遅くても夏までの終了が絶対条件になった。
鉄筋不足が発覚した緑橋で配力筋が施工されたのが 12月、そして、絵堂橋で主鉄筋が切断されたのが1月、時期が一致する。
その後、3月6日には2回目の契約変更が行われ、工期が7月10日まで延期されている。
つまり、今回発覚した施工不良・耐震偽装は、夏に始まる2件の四国の工事を受注したことで、工期までに終わることを最優先としたため、現場で技術的な問題が見つかったにも拘わらず、NEXCOに報告しないまま 施工不良を認識しながら工事を進めたことが、直接的な原因と考えられる。
間もなく第三者調査委員会の最終報告書が提出される。
報告書が水増し請求の詳細や、その背景に政治家への忖度があったことまで踏み込むかは不明だが、笹子トンネル事故以来、安全第一をうたってきたNEXCO中日本が、施工不良な工事で社会不安を引き起こし、国会を騒がせたことに対し
この問題の核心は、政治忖度によるコンプライアンス違反にあると思われるが、報告書が弊社の取材内容と一致するか 注目したい。
ー 続く ー
NEXCOと大島産業⑭ ■低入受注、後で増額
元号が令和に変わった頃、既に工程に大幅な遅れが出ていて、とても10月22日までの工期に間に合わないことは、誰の目にも明らかだった。
その頃大島の人間が、「政治家の先生がロッキング橋脚の補修の仕事は儲かるからやれと言ったので始めた」と複数の下請業者の前で話したという。
この工事は低入札で契約しているので利益はない、むしろ赤字。
だが、その後工期と金額について、計5回の契約変更を行っており、当初6億0242万円の契約金額が最終的に13億2910万円と7億円以上も増額されている。
ある下請の業者は、塚本總業のF次長が「大島のOさんは工事費清算の名人、2倍にもできる」と話すのを聞いたという。
ちなみに、工事費が倍増している工事がNEXCOの工事で少なくとも2件あることが確認されている。
余程増額に自信があるということだろう。
また、前述のように、おそらく根拠不明な保安員費、材料費の水増しで清算させられているが、それには上層部からの強い意向がなければ倍額清算の決済は通常認められない。
つまり、「低入札でも受注さえできれば、後は増額を認めて儲けが出るようにする」というスキームが、大島と政治家、そしてNEXCOの上層部との間で 共有されていた可能性も考えられる。
改めて、法令遵守担当の増田優一副社長におかれては、NEXCO上層部に政治家とつながっている人物がいなかったか、いたとすれば指示を受けて従った社員は誰か、徹底的に調査して頂きたい。
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